特殊愛

全てを思い出して絶望する私を見て、高橋が不気味な声で笑い始めた。

「ふふふふふ、ふふふふふふ……。ある日僕は、校舎の屋上で君と前川の話を聞いたんだ。僕はいつか殺されるんだって君たちをずっと監視していた。48回目の公園で前川と相沢と佐々木がいたのを見て、僕は殺されるんだと確信したんだ……。君たちが悪いんじゃないか。君をこんなにも愛しているのに僕を殺そうとするからだよ。君の顔を石で殴りぐったりしたあと、水飲み場に隠れていた前川に近づいて、血だらけの石を渡したんだ。誰かに僕の事を言ったら君も同じ目にあうからね……、って言ったら彼女は怯えてたよ。

前川は自宅に戻り、血だらけの姿を見た家族が警察に通報した。その時には僕のことも襲ってしまってるから、僕のことを言えるはずがないでしょ! そして、やっぱり相澤と佐々木は俺を殺そうと脇腹を刺してきたよ。でも、俺、わかってたから軽傷になるように仕掛けをして、自分で救急車を呼んで、今生きてるわけ。

君が生きてることを知り、君を殺そうと病室に行ったんだ。君のご両親がいて、君は記憶を失ったと聞いた。僕は記憶をなくしたフリをして、相澤と佐々木にやられたことを警察に言わずにいた。それから、前川と相沢と佐々木は僕に怯えてなんでも言うことを聞いた。

僕は、同窓会の日を君たちへの最高の復讐パーティーにしようと決めたんだ。前川と相沢と佐々木に、君の殺害計画を話した。そしたら自分が殺されるとも知らないで、君を殺すというのに一生懸命協力してくれたよ。ひどい友達だな!

この計画は、君の記憶が戻ることが一番の不安要素だった。だからずっと君を監視していたんだよ。ずっと愛していた君とデートができるなんて夢のようだったよ。うれしかったなぁー。ぼくはしあわせだよ。しかも、50回目に君が僕に告白をしてくれた。やっと僕のものになった。小森みなみはぼくの彼女だ。ふふふふふふふふふ……」

不気味な笑い声が次第に小さくなり、彼の影も見えなくなる。メガネをかけると目の前に高橋はいなくなっていた。次の日、米田さんから高橋優が自殺をしたと連絡をうけた。

それ以来、私はもうコンタクトをしなくなった。不気味な笑い声がずっと離れない。

ふふふふふふふふふふふふ……。キーン……。

「小森さん大丈夫? 気を失ったって聞いたから」

「前川さん、なんで私こんな醜い顔になったの?」

「思い出したの?」

前川さんの顔色が変わった。

「うん。全部思い出したよ。私の顔を返して、私の顔を返してよ!」

と前川さんの両肩をつかんで泣き叫んだ。

「何を言っているの?」

前川さんが急に抱きついてきた。耳元で、何かを言いながら崩れて落ちた。

「犯人はたかは……し」