守母

ある神社の裏で、大学生男女の焼死体が発見された。若者たちが炎に包まれて亡くなるという異様なニュースに何故か興味を持ち、その時付き合っていた彼氏と行ってみることにした。そこは、町全体が海の中にあった。

海の水で膝下の半分まで埋まっている。まるで台風が去った跡のよう。波が来るたびに、水しぶき。車屋の車にばしゃーん、小さいスーパーにばしゃーん。どこの建物も一階には何も置いていない。スーパーで買い物しようと思ったら閉まっているし、変な町で不気味だ。

でも町の人は膝下まで水に浸かりながら普通に生活している。この町の人に話しかけたら

「これがこの町の形だ」

と言う。

住居は2階なのか? スーパーの売り場は2階なのか? 疑問はつきないが、それよりも神社で亡くなった4人の話をしてみた。住民たちは、揃って

「何が起きたんだろうね。かわいそうにね」

と、すごく不安そうな表情をうかべて話をした。

「この海は、夕方になると水が引くから、その時に帰りなさい。気をつけてね」

と優しく教えてくれた。膝近くまである水をかき分けて神社が見える方向へ向かうと、なぜか神社の前だけ水がない。少し高台にあるからなのか……不思議だ。

2人とも疲れたので神社で休むことにした。神社は古く、焦げ臭い匂いにつつまれていた。建物に損傷はなく、特に変わった様子もなかった。

ここで4人の大学生たちの不審死……何があったのだろう。少し時間が過ぎ、何か怖くなってきて、彼氏と私は帰ることにした。

もうすぐ夕方になるというのに、まだ膝下くらいまで水が来ている。町の人が夕方に水が引くと言ってたのにおかしい。町の方を見てみると水が引いてきていた。何故ここだけ増えているのだろうと思った。

住民の言っていたのは、町のことだったのだろう。もしも夕方まで神社で休んでたら帰れなかったと思うと恐ろしい。不思議な海に浸かる町を後にして、彼氏に家の前まで送ってもらい、

「送ってくれてありがとう、またね」

と言って家の中に入った。

私はシングルマザー、高校生の息子と中学生の娘と3人で暮らしている。子供たちに夕飯を食べさせて、家のことをして、疲れてしまい、眠くなってしまった。子供たちに「おやすみ」を言い、自分の部屋で眠る。

住宅街の中にある平屋の家で、私の部屋とリビング、息子の部屋には大きな窓ガラスがあり、その3つの部屋からは庭に出れる。娘の部屋は奥にあって、外には直接出られず小窓は鉄格子で守られている、そんな3LDKの家だ。