守母

パトカーのサイレンの音で目が覚める。割れた窓から警察が入ってきて

「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」

と私の肩を揺さぶる。

私は、気がつき「悠太、愛莉」と叫ぶ。

2人は娘の部屋からそっと出てきて、私と目が合った瞬間涙を流していた。子供たちのもとへと行こうとした瞬間……、私は、警察に手錠をかけられた。

「何故? 子供達のところへ行かせてくれないの!?」

泣きながら叫んだ。

目の前に血だらけの男が死んでいた。血だらけの包丁を持つ私……私が殺していたのだ。子供たちの目の前で、周りの住人に囲まれながらパトカーに乗る。

車の窓ガラスから見える子供たちの姿を見て、何よりも無事でよかったとほっとした。血に染まった手を見ながら、自分の身に何が起きているのかを考え続けた。

警察署で今までの経緯を話すとあの男の正体がわかった。4人の大学生を殺した犯人だったのだ。

あの町に住む25歳の無職の男。私たちが町に行った時に声をかけた車屋の息子だった。男の部屋全体に、ある女性の名前を書いた紙と写真、そして事件が起きた神社のお札が貼られていた。

その女性に、男とのことを聞くと、2人は中学、高校時代の同級生だったという。中学2年生の時に男から手紙をもらい、そこにはお付き合いしてほしい、そして3月14日に返事を○○神社の境内で待ってると書いてあった。だが、その日はホワイトデーで、当時好きだった人のことで頭がいっぱいで、神社に行かなかったそうだ。

男の父親によると、その頃から、明るかった息子はガラリと変わり、自分の部屋にひきこもるようになったという。部屋に入って貼られられているお札をはがそうとすると、形相を変え怒り狂い、父に向かって暴言を吐いたり、ものすごい剣幕で「殺すぞ!」と脅すため、恐怖を感じ口出しできなくなっていた。

男は年に一度、神社に行くらしい。3月14日、それがまさに大学生4人が殺された日だった。4人の男女の死体の近くに、お酒の缶やゴミがあったという。その状況を見ての憶測だが、男は約10年間、片思いしていた彼女の返事を求めて神社へ行っていた。そして事件が起きた。

事件当日、3月14日。

学生4人は観光気分で海に浸かる町にやってきた。町の様子を見て、驚きながらスマホで撮影していたという。インスタ映えを狙っていたのだろう。水のないところを求めて、町の人に神社のことを聞き、そこに向かったという。

神社の境内でお酒を飲み、どんちゃん騒ぎをしていたのだろう。そこに男が遭遇し、自分の居場所を汚されたと頭にきて殺したのだろう。証拠隠滅をするのに燃やしたのだろう。

ニュースになり、私と彼氏が現れた時、車屋の2階で私たちの存在を知り、殺害がバレたと思い込み、何か恐れを感じて、追っかけてきたのだろうか?