「ハナコちゃん、おじさんは思うんだけど、ハナコちゃんのお父ちゃんとお母ちゃんは、ハナコちゃんが仇討ちをしようとしていることを果たして喜んでいるだろうか? お父ちゃんとお母ちゃんが望んでいることは、ハナコちゃんが幸せになることなんじゃないだろうか? もしもハナコちゃんまでデビルの餌食になってしまったら、ふたりはどんなに悲しむことだろう。

ハナコちゃんもコジローが好きなのなら、仇討ちのことは諦めて、コジローと結婚してあげてくれないだろうか? そしてデビルのいない遠くの海で平和な家庭を築くんだ。それこそが、お父ちゃんとお母ちゃんの願いではないだろうか?

ハナコちゃんに子供ができて、お父ちゃんとお母ちゃんの、遺伝子っていうのかな、DNAっていうのかな、そういうものがこの海に残った方が、お父ちゃんとお母ちゃんはどんなに喜ぶことだろう。

おじさんは昔、ハナコちゃんのお母ちゃんが好きだった。もちろん今では亡くなったコジローの母親を愛しているけれども、ハナコちゃんがコジローと結婚してくれると、おじさんは初恋が実ったような気がするんだ。もしハナコちゃんとコジローが結婚して赤ちゃんができれば、その赤ちゃんはおじさんとお父ちゃん、お母ちゃんの共通の孫ということになるじゃないか。

こんなにすばらしいことってあるだろうか。おじさんとハナコちゃんのお父ちゃんとお母ちゃんは、ひとつの家族になれるんだ。それに、ハナコちゃんがコジローと結婚してくれれば、亡くなったコジローの母親も、きっと喜んでくれると思うんだ。コジローが幸せになることが、亡くなった母親の幸せなのだから。

だからね、ハナコちゃん、どうか仇討ちは諦めて、コジローと結婚しておくれ。そしてかわいい赤ちゃんを産んでおくれ」

切々と説くジローの言葉に、いつしかハナコは引き込まれていった。ジローの言う通りだと思った。こうしてハナコは仇討ちを諦め、コジローのプロポーズを受け入れることにした。

夜空の星を見上げながら、ハナコは思った。

「お父ちゃん、お母ちゃん、お兄ちゃん、仇討ちをできなくてごめんなさい。でもハナコはコジローと結婚して、みんなの分まで長生きして幸せになるの。そして赤ちゃんができたら、みんなのことを話してあげるの。そうすれば、ハナコと赤ちゃんの心の中で、お父ちゃんとお母ちゃんとお兄ちゃんは、いつまでも生きていられるんですもの」

そう思うと、ハナコの目から涙がこぼれた。

【前回の記事を読む】お母ちゃんはデビルに、お兄ちゃんは密猟者達に殺されてしまい、ハナコは…