五 ジローとコジロー

ハナコ達の群れが密漁捕鯨船の一団に襲われてからしばらくたったある日、群れに新しい仲間が加わった。オスのマッコウクジラの親子で、父親をジロー、子供の名前をコジローといった。コジローはジローの子供だからコジローなのだ。

「おお、お前はジローではないか」

ジローを見るなり、長老は驚いたように言った。

「これは長老、お懐かしい。お元気でしたか」

「おお、元気じゃとも。お前さんも元気そうで何よりじゃ」

二頭は懐かしそうに挨拶をした。ジローは子供のコジローを長老に紹介した。長老は嬉しそうにコジローを見た。そしてジローの耳に何事かささやいた。するとジローはびっくりしたような目で長老のそばにいるハナコを見た。そんな長老とジローを、ハナコは不思議そうにながめていた。

ジローは以前、ハナコ達の群れにいたことがあったのだ。それはハナコやお兄ちゃんが生まれるよりずっと前のことだ。その後、群れを離れた『離れマッコウ』として世界中の海を泳いだ後、元いた群れに戻ってきたのだ。ハナコとコジローはすぐ仲良しになった。ハナコもお年頃なのだ。二頭は毎日デートをした。二頭の仲の良さはミミちゃんが、

「ハナコお姉ちゃんったら、この頃、コジローお兄ちゃんとデートしてばっかりで、ちっともミミちゃんと遊んでくれないから、ミミちゃん、つまらない」

と、焼餅を焼くほどだった。けれども、そうした日々のうちにも、ハナコはデビルに対する復讐を忘れなかった。お兄ちゃんは密猟捕鯨船の人間に殺されたのだが、それはデビルとの戦いの最中のことであり、ハナコにとってはデビルに殺されたのも同然なのだ。

ある日、ハナコは長老に聞いた。

「長老、わたしがデビルに勝つにはどうすれば良いのでしょう?」

長老はびっくりしてハナコに聞き返した。

「ハナコ、お前は本気で仇を討つ積りなのかい? 仇を討つには、デビルに勝たなくてはいけないのじゃぞ」

ハナコは答えた。

「もちろん本気よ。わたしは必ずデビルをやっつけて、お父ちゃん、お母ちゃん、お兄ちゃんの仇を討つの」

「じゃが、どうやってデビルに勝つ積りなのじゃ。相手は化け物イカなのじゃぞ」

「だから長老、教えてください。どうすればデビルに勝てるのかを」

ハナコの固い決意を聞き、デビルに勝つにはどうすればいいのかを問われた長老は、「うーん……」と考え込んでしまった。