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発生の根拠は、「不在」である。200億年近くも前、「時空は物質の窓が開けられ突然発生した」のである。それ以外何もない。すべて、ない・不在、なのである。

もし、発生に理由と意味を問うならば、科学は「神」を持ち出さざるを得ない。この大原則がある以上、人間の誕生と存在に理由と意味と価値を求めようとすれば、神様が必要になる。

時空も人間も物質であり、時空一如である。自然は物質的な自然史観のなかに位置付けなければならない。人間が考え出した神様論の、ある意味でのうさん臭さと後ろめたさは、ここに由来する。

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小難しいことを言い出したついでに、言葉について考えたことを過去のノートから拾ってみる。名詞(空間&実体性)が先ず生まれ、動詞(時間&流動性)次いで数詞(計量)・形容詞(装飾性)を招き寄せる。やがて、名詞は液化・中性化する。そして、その招き寄せのプロセスのなかで、言語事象は認識レベルにおいて拡散する。ホモサピエンスの脳内プロセスも、世界の言語も、この順列組み合わせに従う。

形容詞(句)においては、駆使の上手さで取り繕うことはできるが、使用する動詞は、使う人の人格が出てしまう。汚く卑しい動詞を使用する人間の中身は、使用される動詞と同じである。政治家も評論家も私のような庶民も、発言から人格を窺い知ることができるのは、動詞にはその人の生理が露出するからである。

扇動・洗脳に使われる動詞は、世界史を通じ醜い。しかし、それに熱狂する庶民も醜い。そのことで、庶民は免罪されない。

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世界各国の辞典類は、自国語はもちろん外国語分野においても、長期に亘る執念と努力の賜物であることが知らされ、表現されている一言の言い回しさえ疎かにできない気持ちにさせられる。

一方で、我々は各国とも英語の辞書は、その気になれば簡単に作られることも知っている。

自国に適任者がいなければ、手っ取り早く例えば英和辞典の日本語訳の「和」の部分を各国の言葉に変換すれば良い。実例もある話であるが、例えば韓国語に直せば、英韓辞典が簡単に完成するし、〇語に直したかったら英〇辞典が簡単に出来上がる勘定になる。

残るのは、学ではなく人としての誇りの問題だけである。

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