運命の出会い

最後のフリーディスカッションも終わりの時間がきたところで、高木教授が演壇に上がり、拍手をしながら圭に謝意を伝えてその日の講演が終わっていた。その後、控え室で待っている加藤と圭のところに助手がやってきて、昼食が準備された特別室まで案内してくれる。

特別室に入って行くと、数人の教授達が高木教授と一緒に立ったままで待っており、圭はそこにいる教授達と名刺交換をして席につく。昼食会の席で高木教授が礼を言う。

「東山さんの今日の講演は本当に参考になりました。目から鱗というのはまさにこのことです。ところで先ほど紹介していただいたAIを活用した画像解析の手法は、御社のシステムで利用できるのでしょうか?」

ここぞとばかりに、隣に座っていた営業部加藤の売り込みが始まる。加藤がシステムを売り込んでいる中、そこにもう一つ別の食事が運ばれてくる。

しばらくして一人の白衣を着た女性の医師が部屋に入ってくる。驚いたことにその医師は先ほど講演会場で見かけた人だった。その医師が部屋に入ってくるのを見て、食事をとっていた大学の教授達がその場で一斉に立ち上がる。高木教授も話を止めて立ち上がり、その医師を紹介する。

「東山さん、私の娘の玲子です」

圭はその医師と名刺交換をする。名刺には研究医、高木玲子とある。高木教授が話を始める。

「玲子はこの大学病院で細菌とウイルスの研究をしております。普段、このような食事の席にはめったに顔を見せないですが、珍しくここに同席させて欲しいと急に言い出しまして、あわててもう一人前の食事を準備する羽目になってしまいました」

高木教授は自分の娘は目に入れても痛くないかのように、その医師を見て嬉しそうにしている。その医師は食事の間、会話に加わることもなく、ずっと静かに食事をとって話を聞いている。こうして講演の後の昼食会は終わり、加藤と圭は高木教授に礼を言って大学病院を後にしていた。

大学病院からの帰り道、加藤が車を運転しながら言う。

「高木教授の娘はすごい美人だろう。だけど、とても暗い陰のある、冷たい雰囲気を持ったミステリアスな女だよな」

圭には加藤が何を言おうとしているのかわからない。