運命の出会い

圭は演壇の上から指示してホールの照明を落としてもらい、ノートPCを操作する。すると大きなスクリーンの上にアメリカで撮ってきた、夜空に光り輝く美しく幻想的な雷の動画が流れ始める。

動画は夜空に次々と現れるオレンジ色の雷を映し出し、五分ほどで終わる。動画の最後にはグローバルプロジェクトのメンバー達の写真が映し出され、ホールの照明が明るくなる。

圭は演壇の上をゆっくりと右に左に歩きながら話を始める。

「今見ていただいたのは、我が社のグローバルプロジェクトのキックオフのパーティーで、私が撮ってきた動画です。こんな美しい雷によるショーは私も見たことがありません。砂漠地帯にある街、ツーソンの夜空いっぱいに、次々とオレンジ色の雷が走り出します。それらの雷は打ち上げ花火と違い、次の雷が夜空のどこに発生するかは全く予測ができません」

そう言って壇上の右端まで行き、講演会場に集まった大学病院の医師達の方を向く。

「夜空に発生する雷は不確実性の高いものです。しかし、近い将来、AIとビッグデータを活用することにより、次のオレンジ色の雷が夜空のどこで発生するかを、的確に予知できる時代になっていくと思われます。今まで膨大なデータはあっても、その処理に長い時間がかかった分野にも、この最新テクノロジーは活用できるのです」

圭のプレゼンテーションは、つかみの話で巧みに聞く者の心をしっかりとらえていた。

圭は次の画面にミネソタ州ロチェスターにある、メイヨー・クリニックの本部の写真を映し出す。そこはアメリカにある巨大総合医療機関の本部で、医療関係者なら誰でも知っている。

「私がグローバルメンバーの一人になっているこのプロジェクトでは、このクリニックが共同研究機関になっています。ここには膨大な臨床データや各種画像データが残されており、その有効活用が課題になっております。次に紹介しますのが、最新のAIテクノロジーを使い、それらのデータを医療分野にどう有効利用しようとしているかの事例です」

圭がその事例を次々に紹介し始めると、高木教授と会場に集まった医師達は、全員身を乗り出すようにして、プレゼンテーションに釘づけになっていった。