出会い

彼との出会いは、もうかれこれ四十七年前になる。ついこの間だった様な感じがするが、すでに人生の半世紀近くを過ぎている事になる。彼との出会いは、偶然ではなく、これは運命だったのだろうかと、彼が亡くなってから改めて感じている。

彼とは同じ大学ではなかったが、お互い大学祭の実行委員をやっていて、あの頃は、お互い「良い大学祭」をやる事をめざし、切磋琢磨していた。若さゆえにギラギラと燃えていた様に思う。

私達が大学祭をやっていた頃は今と違い、前夜祭を外の会場を借りて結構派手にやっていて、忙しくもあったが、やりがいもあった。その様な中、彼は我大学のお手伝いに来てくれていて、舞台関係を主にやってくれていた。

最初は「初めまして」で、平凡なありきたりの会話だった。彼は背が高く、痩せていて、人一倍色々な事ができ、親切だった。今思うと、結婚してからの彼とはあまりの違いに笑ってしまうのだが、まめで、色々な事を知っていて、頼むと何でもやってくれた。

そんな彼と付き合い始めたのが確か二十歳頃、あちらこちらへとたまに出かけた。又彼の友人達と一緒に白馬にスキーに行ったりもした。あの頃は、お金も無かったし、何も無くて、でも楽しかった。若かったせいだろうか、何をやっても気楽で、知らない街に二人で行く事がすごく新鮮で、何もかも初めて見る景色に感動していた。

学生時代の唯一の贅沢は、今ではあまり贅沢ではないかもしれないが、山陰に行った帰りに始めて乗った新幹線のグリーン車だった。当時は

「お金が無い学生の身で、こんな贅沢して良いのかな」

と、二人とも同じ事を思っていた。この時、少しの贅沢がこんなにも優越感を覚えるのであれば、これからも頑張ろうと思ったものだ。卒業したらお金を稼いで、たまにはこんな旅行をしたいと、改めて思っていた。

結婚してからの彼は、当時は毎日が忙しく深夜に帰る日々で、子供の世話は、すべて私一人でやっているという感じで、まるで母子家庭状態。私もストレスだらけの毎日だった。

でも今思うと、子供がまだ小さく、家にいてくれて毎日が忙しくても、この頃が一番楽しかったのかもしれない。あっという間に終わる毎日。疲れが勝って、何も考えなかった。家族の事しか考えられず、毎日毎日があっという間に終わっていく。そんな日々、今ではとても懐かしく、戻れるなら時々あの頃に戻ってみたいと思う。

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