特殊愛

卒業式の日、私は自分の部屋のベッドの中。メガネをかけるようになってから一度も学校に行ってない。前川さんが、卒業アルバムを届けに来てくれた。母親が受け取る。気持ちを落ち着かせてアルバムを開くと、手紙と病院に飾ってあった写真がはさまれていた。

みなみへ

みなみ、本当にありがとう。みなみは、みなみなんだからね。同窓会で会おうね。この写真のみなみの笑顔が大好き。忘れないでね。

前川より

アルバムを見ると、額の右側が陥没していて、手術した傷跡と眼球は真っ白。その姿は病院で見た鏡に映った私。

「なんで私がこんな目にあわなきゃならなかったの、何故なの……」

と泣きながら叫んだ。私の顔を消しゴムで消して、その上から顔を描いて、消して、描いての繰り返し。グチャグチャになっていく私の写真。そうやって私の写真の顔を全部消した。そして記憶をなくした。自分が嫌で記憶を封印したのだろう。ハット気がついた。

控え室からもうろうとしながらトイレに行き、鏡を見る。そこに映っていたのは、可愛いワンピースを着た化け物。これが私の本当の姿……。そういうことか……。自分の顔を眼鏡で隠し、ずっと下を向いて歩いていた。人にぶつかっていたのは私の方だったんだ。周りとなるべく関わりたくないから挨拶もしなかった。これでは会社の人だって私を無視するのは当たり前だよ。全部私自身が招いていたことだった。

コンタクトをつけてからは、アイドルの頃の顔だと思い込んでいたから、目を見て挨拶ができたし感情というものがちゃんとあった。でもみんな私の顔を見て、怖いとか、気持ち悪いとか、可哀想とか、色々な気持ちで向き合っていたのだとわかった。そんななか、こんな顔でも、優しくしてくれた人がいた。涙が溢れ出す。本当の私の姿を見ても、告白をしてくれた彼に会いたい。キーン、また頭が……痛い痛い痛い。トイレでうずくまる。

あの公園だ。相澤さきと、佐々木裕太がダンスをしている。高橋優が私に告白をする、私が断る。手を握って別れる。背後から頭を殴られて倒れる。馬乗りになってきて石で殴られる。痛い痛い……、痛い痛い助けて。両手で石を振り上げたその瞬間に顔が見えた。前川さん……? えっ? なんで……。また現実に引き戻された。

私は急いで、携帯で事件になってないか調べてみた。2009年8月7日〇〇県〇〇市〇〇中学校の3年生男女2人が、〇〇公園で何者かに暴行される。女子生徒は石で殴られて意識不明。男子生徒は脇腹をナイフで刺されて重症。犯人は見つかっていない。という記事が載っていた。私のことだ。そしてナイフで刺されたのは、高橋優だった。何がなんだかわからない。頭が痛い。頭を抱えながら、会場に戻ると、前川さんが私のところにきた。

「小森さん大丈夫? 気を失ったって聞いたから」

「前川さん、なんで私こんな醜い顔になったの?」

「思い出したの?」

前川さんの顔色が変わった。