数日後、雨上がりの澄んだ空のもとで、酪農科二年生は、ニシベツ実業高校の草地試験圃場(ほじょう)で植生調査実習を行っていた。酪農科教員の佐伯と早川が、全員の前で調査のやり方を一通り教えている。

「草地の良しあしを評価する方法として、植生調査がある」佐伯は続けた。

「植生調査にはいろいろなやり方があるが、今日は草丈の測定と冠部被度の測定を行う」

「植生調査のためには、まず測定する地点を決める。測定する地点を決めたら、コドラードを置く」

「コドラードは、一枚の試験草地に対角線上に三カ所設置する。まずコドラードを設置してみようか」

コドラードとは、五○cm四方の枠のことである。佐伯は草地試験圃場の区画の一つにコドラードを置いた。

「まず草丈の測定だが……」と佐伯は言いながら、一mの()(じゃく)を五○cmに伸ばして、先端をスッと地面に置いた。

「地面から一番長い葉先までの長さを、草丈としている。ミリメートル単位まで測定しよう。コドラードの中で草種ごとに一〇本測定することになる。測定用紙に記入したら平均値を算出してくれ」

「冠部被度については、早川先生から説明がある。よく聞いてくれ」

今度は早川が説明を始める。

「冠部被度というのは、この五○cm四方の枠の中で、どの種類の草がどれぐらいでかい面をしているか、それを数字にしたものだ」

「このコドラードを一/四に分割してみる」

早川はそう言うと、二本の折り尺を五○cmにして、十字形の形で四分割するように置いた。

「コドラード全体を一○○%とすると、一/四に分割された小さい四角の中は何%になる?」

「二五%になります」佐藤が答えた。

「例えば、白クローバーを測定しよう。白クローバーを一/四に分割された小さい四角の中に寄せたとしたら、あふれるだろうか、それとも収まるだろうか」

集まっている生徒たちをぐるっと見回しながら、早川は問いかけた。

「収まって、そして少し足りないぐらいですね」山川が答えた。

「そう、少し足りないぐらいだ。これが冠部被度二○%ということになる」

「このように草の種類ごと、そして何も草が生えていない裸地が、それぞれ何%あるかを判定していくのが冠部被度だ。コドラードの中を合計すると一○○%になるように判定していく」

ここまで早川が言い終わると、一息ついて草の種類を説明し始めた。