第1章  令和の今、行政改革最高のチャンス

「トライやる・ウィーク」でモチベーションを上げよう‼

この試み(トライ)は何故始まったのだろうか。兵庫県には灘高校や甲陽学院、淳心学院、白陵高校などの錚々たる私立進学校や神戸高校や加古川東、姫路西といった有名公立高校も多い。しかし一方で陰の部分、校門圧死事件や「酒鬼薔薇聖斗(さかきばら)」の首なし殺人など教育界を揺るがすショッキングな事件の舞台ともなった。

この試みは知育偏重、偏差値重視の毎日から日常生活に立ち帰って地域や会社などとの繋がりを知ってもらおうとの意図で、やる気を起こす一週間トライ(やるウィーク)にしようとするものである。何故勉強しないといけないのか? その職業に就くためにはどういう知識が必要なのか? を知るための実習のようなものである。

最近では我が母校の医学部にも入学時に行うアーリーエクスポージャー(初期曝露)という病院見学がある。手術室に入れば何故解剖学が必要かすぐに判る。薬局にある沢山の薬を見れば薬理学の重要性を、臨床検査室では細菌学、病理学の大切さが一目瞭然である。

行き先の見えない勉学よりゴールや頂上が判っていると上達のスピード、能率は上がる筈である。私はこれを証明した。少し自慢話になるがお許しいただきたい。

遠縁の開業医に長男がいた。彼は大変大人しい性格で血を見るのが嫌。両親の勧める医学部進学には気乗りしなかったようだが3浪して入学、大学でも留年して退学の恐れも出てきた頃に親族会議が開かれた。

そこに出席していた従兄弟の話では「結婚させてはどうか。奥さんに発破をかけてもらったら勉強するかも知れない」と。すると別の親戚から「それは傷を大きくするだけ。一人ならともかく他人を巻き添えにしてはいけない」との正論。何やかやで「歳の近い公雄ちゃん(私)の意見を聞いてみたら」と私のところにお鉢が廻ってきた。

人一人の人生と家業の医院の命運が懸かっており迂闊なことは言えない。取り敢えず「彼とゆっくり話がしたいので夏休みに一週間、赤穂の官舎に遊びに来て」ということになった。夏休みには京都大学や神戸大学、滋賀医大などからも病院実習に来る。刺激になって向学心も高まるのではと考えたのであった。

赤穂で一週間過ごし、特に目立った変化の様子もなく大学へ戻った。翌年の3月に彼の母から弾んだ嬉しさ一杯の声で電話あり。「卒業できたよ。あんたのお陰よ」と。私の病院から帰ってからは勉強に身が入ったらしい。

何故勉強しないといけないのか、判らなかったことが病院の現場を見て判ったらしい。私はずっと私に付いているようにと言っただけで何も教えた訳ではなかったが……。

手術室や外来の診察、胃の透視、当直など全て金魚の糞のように付いて来させ、風呂も3歳位だった私の長男と一緒に入れた。夕食も9時を過ぎることが多かった。何かを感じてくれたのだろう。

手術は解剖学の理解なくしては執刀できない。薬理学知らずして薬の処方は無理。何故それらを学ばなくてはの意味が分かったのであろう。彼は今、故郷の医院の立派な院長である。医師国家試験を一度失敗したがこれは愛嬌。

40年近い過去の思い出話である。彼の両親はもうこの世にはいない。

教育で大切なのは動機付け、モチベーションであろう。高校生レストランで全国的に有名になり地域再生のモデルともなった相可高校がこれに似ていると感じた。因みに、これの発案実践者である岸川政之先生と先日お会いし色々と話を伺ったが考えさせられることが多かった。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和の改新 日本列島再輝論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。