1990年代半ば、米国で注目されたのが、豊胸手術で健康被害を招いたとして、シリコンを提供していたダウコーニングおよびその関連会社を訴えた「クラスアクション」でした。同社は約17万人の女性に、総額34億ドル(4420億円)を支払い和解しました。

1991年には雇用に関連する「クラスアクション」も提起されています。ロイス・ジェンソン(Lois E. Jenson)さんら3人の女性がイヴレス鉱山を相手どって起こしたのが、日常的な職場のセクハラの改善を会社に求めた「クラスアクション」でした。1998年、会社は15人に計350万ドル(4億5500万円)を支払うことで和解し、職場環境の改善も約束しました。連邦裁判所で行われた最初のセクハラ集団訴訟でした。

最近では個人情報をめぐっての「クラスアクション」が目立ちます。フェイスブック社がユーザーに無断で顔認証データを収集していたとして2015年から始まった訴訟は、2020年、同社が約160万人に計6億5000万ドル(845億円)の和解金を支払うことで解決しました企業が対象になるだけではありません。

カンザス州のオリバー・ブラウンさんが州の教育委員会を相手取って起こしたのが、教育の機会の平等を求める訴訟でした。黒人と白人の学校が分離されていたため、ブラウンさんの娘、リンダさんは自宅からわずか7ブロック先の公立小学校に受けいれられず、1.5キロメートル離れた別の小学校に通うことを余儀なくされていました。

裁判は最終的に4州の5つの同様の訴訟が統合された「クラスアクション」となり、1954年、連邦最高裁で学校の分離は憲法違反と判決が出ました。

19世紀後半、連邦最高裁が下した「分離すれども平等」の判決を約70年ぶりにひるがえした画期的な判決でした。