序章

「闇は、一つの目的に対し純粋なまでに真っ直ぐとする。そうは思わないか。決して、脇見はしないはず。堕天光から闇に堕ちた者。何故堕ちたのか、考えたことはあるか?」

ある、と英良は答える。

「己は知らぬこと多すぎる。全てを己に語る。これより光と闇人間の話をしよう。これから己がしなければならぬこと、言葉長くなるが構わぬな。全ての言葉を理解せよ。そして、己は真実を知る必要がある。真実の封を解く」

英良は額から流れる汗を拭い大きく深呼吸をする。三、四回深呼吸をすると、不思議と少しは冷静になった。

「己は全てを知る権利を得た。ならば、まずは光と闇生まれたところより始まる己の見解は知らぬ。しかし、世に先と存在したは人間、私が力施行したのはこの世に生命を放ったところまで、言ってみれば人間は産まれるべくして、産まれたのではなく、偶然の産物。それは私にとっての楽しみでもあった。芽生えた力による可能性を見た。己等人間を見守る必要であれば、力も与え助ける。それが私の当初の気持ちとなる……希望という感情……このようなことをいうのだろう」

英良は黙って聞いていた。

「後、幾年か経った時人類は願うことを始めた。それが大なり小なり。個々で求める者は異なる。正なる願い求める者もいれば負なる願いを求める者もいた。私は二つの力を作り人間の想いに応えた。全ての願いを叶えられるようにと。やがて正の願い叶える力は神と……光と総称されるようになった。逆に、負の願い叶える力は悪魔……闇と総称されるようになる。分かるか。この意味が。光も闇も己等人間が作った。その呼び方さえも」

英良は頷く。

「言ったはずだ。光と闇の対峙は一生終わらぬ。己を呼ぶは全て終焉とするため。何故、闇は増殖した。光は増殖した。一を聞いて十を知った気になるな。それが愚かだと言うのだ。この程度で全て終わると思うのか」

星の記憶は愍笑(びんしょう)した。光の世界が来たら全てが済むはず、英良は反論する。

「済まぬな。私は常に中立。このようなことはしたくはなかった。しかし、己が話聞かぬとなれば……全ての話を聞け。そして、答えよ」