羅生門

英良はすぐに窪地へ降りてきた。

「大丈夫でしたか?」

英良は太陽神に言葉を掛けた。

「……危ういところ、我を助けてくれて礼を申したい」

太陽神は立ち上がり英良と毘沙門天に向かい合って礼を言った。

「何故ここに?」

英良は尋ねた。

暫く間を置き、「人界に異変が起きたのだ」太陽神は短く答えた。

「異変?」

英良は聞き返した。

「そうだ」

太陽神は必要なことだけ答え長く言わなかった。

「どうして貴方がここに?」

何故神がここにいるのか英良は聞きたかった。

「闇の力でここへ堕されたのだ」

「闇……?」

英良は一人呟いた。

「そうだ。闇が人界を覆い我の光を遮ったからだ。今まさに危機が迫っていると言っても良いであろう」

「危機?」

「そうだ」

「どのようなものですか?」

「人界は既に昔のような所ではなくなってきたということだ。闇の力が蔓延し我等の神々の力が届かなくなっておる。厚い雲が地を覆い全てを流し人々の嘆きが聞こえている……風は怒り、地は悲鳴を上げている」

太陽神の言葉は続く。

「全てが狂い始めているのだ。我も含め八百万(やおよろず)の神の声が届かなくなっておる」

「どうしてそんなことに?」

英良は言う。

「人界では己のことしか考えていないということだ。与えられた土地を削り生命の水を汚し己の住む大地を窮地へと追いやっておるのだ。このままではいずれ自らを崩れ落ちる土の中に追い込んでいくであろうぞ。人というものは多くの物を欲する。それが螺旋となり際限なく続く。自らを破滅に追いやることも考えずにだ」

破滅、破壊、欲望……己の欲を満たす底なしの闇……英良は空ろな目で虚空を見つめた。どこを見ているのか分からない、焦点の定まらない抜け殻のような身体になっていくのを感じる。太陽神の言葉は危機感というよりは絶望を表している。

「地球の地軸が狂い始めている。このままでは、地球は破滅を迎えるであろう。今でもその予兆が起きていることは分かるな?」