五.シバムギ

水産クラブの三・四年生が、ニシベツ川の電気伝導度を測定していた前後の雨の日、酪農科の高校生と付属短期大学の学生は、とある講演を体育館で聴いていた。

三本農業事務所所長はパワーポイントでスライドを使いながら、よく通る声で話を進めている。

「近年、草地にシバムギやリードカナリーグラス、それに昔からよく見られるギシギシが増加している。一言で言えば、雑草が増加している。雑草が増加すると、牧草の栄養価が下がってしまう。そうすると思ったように乳量が増えなくなる。だから、雑草を減らして、チモシーなどの牧草を増やしていくことが必要だ。しかし、一度雑草が優占した草地は元に戻ることはない。そこで必要なのが草地更新だ」

三本所長は一度スライドから目を離し、前の方に座っている短大生たちを見回した。皆真剣な表情でこちらを見ている。

「草地更新は、昔からよく行われている。しかし、プラウでただ土をひっくり返しただけでは、シバムギやリードカナリーグラスの地下茎、それにギシギシの根は生き残ってしまう。これでは、草地更新してもすぐに雑草だらけの草地に戻ってしまう。そこで必要なのが、草地更新前に除草剤でしっかりと元の草を枯らすこと、そして、プラウでひっくり返して、砕土、整地した後に一カ月ほど草を生やして、除草剤を撒くことだ」

スライドを指しながら淡々と講義を続ける所長の声と、学生たちと生徒たちがノートを取る音のみが体育館に響いていた。

「こうすると、表面に出てきた種や地下茎から発芽した雑草を、すべてたたくことができる。それから、牧草が優勢になる条件を整えてやる必要がある。土壌のpHを高くするために、炭酸カルシウムはしっかり散布する必要がある。それに、牧草は化学肥料によって生育がよくなるから、これもしっかり撒く。このあとも、化学肥料をしっかり撒く。そうすると牧草が優勢な草地になる」

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