春の兆きざし

周りは枯れ草が(おお)っているが道はしめり、吹く風は甘い山々は紫色にかすみ寝ぼけている

その先はグレー、青い空につながる

去る者は美しく去るが良い

残された者は雪解けの中で 悲しく我慢強く足掻くだけだ

暖かさを求めて、日差しを求めて ──

木々の間の空気は青味がかり 枯れ木ばかりと見た(こずえ)の先に芽が

そして孤独ぶりした冬は梅に見送られる

噛みしめた苦しみは吐き出そう (ちぢ)こまった身体を解き放とう

もうそこに春の息吹が聞こえている