あの日の君に

桜が急に咲き始め

樹木(きぎ)は緑の芽を開き始める

意味の分からない憂愁に苦しめられ

街をそして山を歩き廻る

湖は渺茫(びょうぼう)として春の光に霞み

遠くの山々は青く、そして白く空に溶ける

寒気にさらされて立っていたのは

間違いなく、ついこの間だったのだ

君に伝えたいことがある、最近逢っていない君に

車を止めてキスをしたあの場所は

柵が立てられ、もう車は入れない

あの時ライトに照らされた秋色は美しかった

あの時を思うと今も息苦しくなってくる

今、春が来た、万物息づき始める春だ、君よ ──