少林寺拳法の大会には大まかにいって、一人でやる単独演武、二人一組の組演武、大勢でやる団体演武があって、審判がつける得点で順位を競う採点競技なのね。

従姉が出場したのは女子規定組演武の部で、茶帯を締めた女子の級拳士が出場するカテゴリー。いくつかの定められた法形(ほうけい)と呼ばれる技を組み合わせて、お互いに突いて、蹴って、投げて、関節を極めて抑え込む約束組手みたいなものなんだけど、柔道や剣道の「形」と違ってものすごく速いの。あらかじめ攻防が決まっているとはいえ、真剣勝負と見紛う速さと迫力は只事じゃなかった。

取り分け、従妹と同じ女子規定組演武の部で一位になった駒根・白鳥組の演武は素晴らしかった。元体操選手の駒根先輩と元バレリーナの白鳥先輩は動きの激しさと立ち姿の優雅さにおいて際立っていた。規定の部は演武の構成がみんな同じだから、その差はより明確だった。二人とも従姉より美人だったしね。あ、これはナイショ。

駒根・白鳥組はその夏の全国大会で二位になった。大会が開催された兵庫県まではさすがに行けなかったからネットにアップされた動画で我慢したけど、やっぱり素敵だった。

文化祭では秋の新作、自由組演武の発表があって、最前列に陣取ったあたしは静と動のコントラストに魅了された。録画した動画は受験勉強で挫けそうになった心を何度も支えてくれた、あたしの大切な宝物。

小さい頃からスポーツで人に後れを取ったことがないあたしは梅ケ谷三中のバスケ部でもイケるはずだった。でも、顧問の先生が体調不良で休みがちだったり、チームメイトが初心者ばかりだったりして、練習試合を含めても勝ったことはほとんどなかった。一五〇センチに満たないあたしがチームのレベルに合わせてプレーしていれば、地区選抜担当の先生の目に留まることもなく、不本意だけど最後までパッとしなかった。

それでもバスケは好きだった。だけど、女子の部活にありがちな妙に陰湿なところが性に合わなくてね。いじめの対象が週替わりで変わるような部活で本当の友達を作りたいとは思えず、自分の居場所を学校の外に求めた。

夕食後に自転車を走らせて、梅ケ谷総合体育館の入口前の広場でストリートダンスのメンバーと踊っていた。体育館の職員は迷惑そうな顔をしていたけど、気づかない振りをして閉館後も踊り続けていた。

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