あたしは、ジグソーパズルを眺めていた。

おじいさんは、杖を上着の内ポケットから取り出すと、ぶつぶつと呪文のようなものを唱えながら杖を振った。すると、ジグソーパズルが光りながらふわりと浮き上がった。そして、一度ばらばらになったかと思うと、そっと光を発したまま元の位置に戻った。

覗き込むと、ジグソーパズルは、星空模様になっていた。全体的に黒に近い群青色で、ピースによっては星が瞬いている。ピースとピースの繋ぎ目は、よく見ないとわからないほど緻密な作りだった。おじいさんが、“空”と呼ぶのもなんだかわかる。

そんなジグソーパズルをよく見ると、ところどころ抜けていた。おじいさんは、そのうちのひとつの部分に見つけたパズルのピースを、そっと置いた。ピースは、またぱぁぁと光ると、ぴったりとその場に収まった。戻ったピースは、隙間なく綺麗にはまっており、もはやどこに収まったのかわからないほどだった。

「お嬢さん、お茶はお好きかね?」

「大好き!」

“お茶”というワードに弱いあたしは、ジグソーパズルから視線を逸らし、大きく頷きながらソファに腰かけた。あぁ、我が家にもソファがほしい。いや、それよりマッサージチェアが良い。切実に。

「ほっほ、元気なお嬢さんじゃの。ハーブティーで構わんかね? エルダーフラワーなんじゃが……」

「空元気ですねん(・・)……」

関西人を真似てみた。無視された。

「あ! それから、あたしエルダーフラワーなら蜂蜜入りが好き!」

「ほぉ。それなら、喉に優しいお茶になるのう」

蜂蜜入りのエルダーフラワーティーは、咳が出る時によくお世話になっている。