コロナ禍で勝ち残る宅配便

コロナ禍のなかで宅配便への依存度はそれまで以上に高くなった。それでは実際に業務に当たっている宅配便企業にはどのような変革の波が訪れたのだろうか。

コロナ禍以前の宅配便業界は「不在」の問題に悩まされていた。コンビニなどで伝票を書けば、日本全国どこへでも届けてくれる宅配便だが、唯一無二の弱点ともいえるのが「不在」だった。せっかく届けても受取人が不在ならばどうしようもない。

だが、都市部は共働き世帯や一人暮らし世帯がほとんどである。しかもいったん外出すれば帰宅は遅くなる。なにも遅くなる理由は残業だけではない。仕事のあとに食事に出かけることも多い。ただしそうなると、宅配便配達時の不在率はどうしても高くなる。そしてそれに合わせて再配達率も高くなっていく。

そうなると宅配便の営業所は不在による再配達で溢れてしまう。ただでさえ、安いといわれる宅配便の利益率は不在から再配達、再々配達といった流れで負のスパイラルに突入してしまうのである。

実際、宅配便企業は「不在」の対策に苦しんできた。メールやSNSなどでお届け情報を確認、変更したりできるように情報システムに多大な投資も行ったし、宅配ボックスの設置や活用も推進した。またセキュリティには不安があるとの声もあったが「置き配」も検討されるようになった。しかし、どれも不在対策の決定打とは成り得なかった。

そしてそうした宅配便企業が試行錯誤で苦しむ最中にコロナ禍が発生した。その結果、どうなったか。巣ごもり世帯が増えたことにより、不在の問題は大きく改善された。

しかも感染リスクに配慮して置き配も市民権を得ることになった。コロナ禍で宅配便の取扱量は伸びたが、不在荷物が減少したことにより営業所のスペースが極端に不足するということはなかったのである。さらにいえば「宅配便市場もそろそろ飽和状態だろう」という見方から「まだまだ成長可能性がある市場だ」という見方に変わってきたのである。

流通の「超中抜き」がすべてを変える

「日本の流通構造は多段階で商品が小売店頭に並ぶまで多くの中間業者が介在している」ということが繰り返し指摘され、「流通の中抜き」がキーワードとなってきた。

実際、多くの卸売業者が淘汰され、製造業が卸売業を経ずに直接、小売業と取引する時代となっている。家電量販店やドラッグストアなどが強力なバイイングパワーを発揮して、消費者に安価に商品を提供できるようにもなった。

また、アパレル業界では製造業の機能と小売業の機能が連結した業態であるSPA(製造小売業)が登場し、製造業、あるいは小売業がサプライチェーンを統括し、小売販売情報を生産計画に反映させていくというビジネスモデルを確立した。

しかし、コロナ禍を経て、時代はさらに先に進もうとしている。つまり、生産地から消費者にダイレクトで商品が届くドロップシップ(直送)型の「超中抜き」が一般化してきているのである。製造業はオンライン決済を得て、物流企業が顧客に商品を運ぶ。自社のホームページで商品を宣伝、販売し、物流さえ押さえておけば、もはや卸売業も小売業も必要ないのである。

そしてこうなると、物流システムのレベルがこれまで以上に売上高や利益率に大きく影響してくる。アマゾンが巨大物流センターを次から次へと建設し、物流システムの緻密度を上げていくのも、「物流で他社に負ければ自社の未来はない」ということがはっきりとわかっているからである。