がんの治療方法について私は、また調べることにした。

家に帰ると、ビデオに撮っておいた先日放送したがんについての番組を見てみた。

がん幹細胞という所謂がんの親玉というべきものが発見され、そのがん幹細胞をやっつければがんは転移しないという内容であった。がん細胞が増えるのは、がん幹細胞があるからで、がん細胞が移動しても転移は起こらないが、がん幹細胞が移動すれば転移が起こるということだ。抗がん剤でがん細胞は死んでしまうが、がん幹細胞は死なないとも言っていた。

そして大事なポイントは、このがん幹細胞をやっつける方法が分かりつつあるということだった。しかも、薬でやっつけることができるらしい。つまりは、胃を切る必要はないということだ。ただし今は臨床試験の状態であり、東京のがんセンターで研究を進めているとのことであった。

胃がなくなることを考えたら、他に怖いことはないと思い、そのがんセンターに電話をしてみた。自分が胃がんで全摘の手術を受けようか迷っていると伝えると、今日はもう担当の者がいないので明日もう一度電話をするように言われた。

次の日電話をすると、今度は担当者が対応してくれた。がん患者ということもあるのであろう、とても丁寧かつ親切に対応してくれた。ただ、内容的には、臨床試験の段階であり、一般には薬の提供はしていない。臨床試験をする人も命に関わるような方々にやってもらっている。胃を全摘すれば治るようならその方がいいとのことだった。

そんなに簡単に胃全摘術に代わる方法は見つかるはずがない。もう一つの番組を見て考えようと思った。

もう一つの番組では、東京と大阪と福岡にある大学の医学部付属病院での画期的ながん治療の方法について放送していた。大学病院の研究者の取り組みには本当に頭の下がる思いであった。寝る間も惜しんでがんを退治する方法を研究していることがよく分かった。自分の胃がなくなることだけで大騒ぎしている私とは大違いだと思った。

ただ、どこも臨床試験者は捜しているようだったので、自分のこの胃が役に立ち、胃が残るのであればこれ以上の喜びはないと思って次の日に三つの大学病院に電話をしてみた。結果は前日の東京のがんセンターと同じであった。

自分のがんはまだまだ軽いがんであることが分かってきた。胃を切る位で悩んでいてはいけないのだろうか。でもできたら残したい。そういえば、静岡の県立がんセンターでは、最新機器を使った手術が行われていると前に調べた時に書いてあった。明日そのがんセンターに電話して最終決断をしようと思った。