第二章 仮説社会で生きる欧米人

トランプ大統領の気になる仕草

キリスト教が説く世の構図を大まかに述べてみますと、創造主のいる無限界、神のいる天国、そして人間が住んでいる宇宙の三つに分けています。構図のスケールの大きさに驚かされますが、本稿ではこの世とあの世に話を限定し、欧米人の生き方と予定説、この二つにトランプ大統領を絡めて話をしてみたいと思います。

キリスト教は人が住むこの世と神のいるあの世の二つに分け、いま生きているこの世を仮りの社会と見立て、神のいるあの世(天国)を本当の社会と位置づけています。私達日本人も、現世とあの世を分ける考えは成る程理解できますが、この世を仮の社会と、神のいる天国を本当の社会と見立てる考えは、分かり難い処があります。

この世は仮の社会(仮説社会)と言えども人間が現に住んでいる社会です。そこでキリスト教は人間の生き方に予定説を入れ込み、この世を倫理的に生きる人が天国で神に迎えられると諭しています。社会哲学者のマックス・ウェバーは、予定説に基づく人の生き方を「目的合理性」の生き方だとし、人が目的合理性に生きることは手段を整合して無駄のない生き方になり、新資本主義を生みだした基になったと主張しています。

トランプ大統領は、キリスト教の信者で、それも熱心な信者だと言われています。これを受け、トランプ大統領は、予定説を入れ込んだキリスト教の三位一体説を信奉し、目的合理性の精神を強く意識して生きていると私は見立てています。

アメリカ第一主義を掲げ難民や貧しい海外の人々に過激的で差別的な発言を繰り返すトランプ米大統領とキリスト教の三位一体説。妙な取り合わせに見えますが、テレビに映るトランプ大統領の映像から感じる、私の視点にお付き合いください。

トランプ大統領は会談の前や後の、相手と談笑している時、口調や表情とは別に、両手の指を逆三角形にして相手と対話しているシーンがテレビでよく映っています。指は腰よりの下に置いているので見過ごし勝ちになりますが、安倍首相と談笑している時も、トランプ大統領は指を逆三角形にしている姿が映っていました。私がテレビを側で見ていた人に、「トランプ大統領はまた三角形の指の仕草をしている」と話すと、笑われることがありますが、相手に見えないあの指の仕草が、私には妙に気になります。

トランプ大統領は大統領になる前、アメリカの不動産王と迄言われた人です。アメリカの不動産王と言われることは、彼が世界でも例のない位の財産を持つ人物だとなります。不動産は動かない財産ですから不動産と言います。

普通に考えれば値上がりする多くの土地を長期所有することが、不動産王になれる条件と考えます。だが、不動産で成功する人は、収益を上げる不動産を安く取得して運用して儲け、物件が値上がりすれば高く売り、また他の不動産を安く購入することを繰り返しています。

トランプ大統領はその実践者です。キリスト教の予定説は、現世を倫理的に生きる人は死後、天国で神から迎えられるとする説です。キリスト教の予定説とトランプ大統領の投資術は、同じ先を見通していますが、一方は倫理、他方は金儲けと動機が全く異なっています。

トランプ大統領は、今だけでなく先を見通す能力があるのは認めます。しかし、彼の投資は神の存在を意識した目的合理性でなく、損得だけ目的とした投資です。だが、トランプ大統領は自分は真摯なキリスト教信者であり、それ故、自分は予定説に基づいた目的合理性の精神で不動産王になったと思っている筈です。

難民に対する差別発言、度々行う側近の更迭、議会そして司法への過剰な介入等は、倫理的な生き方をする人の予定説でなく、自分の損得を前提にした予定説に変貌しています。トランプ大統領の先を見通す能力は極めて高い能力だと認めます。それが彼をアメリカの不動産王と称えられる所以になっていると思います。

だが、先を見通すトランプ大統領のいまの頭の中は、不動産でなく次期大統領選だけになっています。アメリカの大統領は世界の指導者です。少なくとも日本を含め西側陣営ではそう見られています。だが、自分の選挙だけに焦点を当てて政治を行うアメリカ大統領では、世界が混乱に陥り、不安定になるのは必至で、適格を欠く大統領と言わざるをえません。

人の仕草は自然に出てくるものです。例えば、人は困った時に頭を指で軽く掻くものです。難しい場面に遭遇すると腕を組んだりもします。

私は会話の途中のトランプ大統領の指の三角形の仕草が妙に気になります。「トランプ大統領が何故あのような仕草をして談笑するのか?」の私の指摘、疑問に対し、心理学の専門家のご意見を拝聴させていただければと思いますが、如何ですか……。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『特性を活かして生きる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。