第二章 仮説社会で生きる欧米人

株式市場も仮説から成り立っている

欧米人は本質に近い仮説の意味を重く捉えており、その結果が民主政治であり、三権分立制度であると説明しました。本質に近い仮説、この延長線上にあるのが仮説社会ですが、欧米社会は政治や権力形態だけでなく、経済にも仮説制度が多く導入され、それが実施されている社会です。

今日の世界の政治体制は資本主義国家と社会主義国家の二つの形態に大別することが可能です。資本主義国家の経済は市場経済を、社会主義国家は基本的に計画経済を採用していますが、最近の中国は計画経済と市場経済の併存システムを採用しています。

現在の世界の大勢は市場経済を採用する資本主義国が大多数を占めていますが、資本主義経済の仕組みの根幹をなす一つが、株式市場です。資本主義経済に於ける株式市場の内容を大まかに説明しますと、企業は主な資金を株式市場から調達し、市場から得た資金で設備投資を行い、労働者を雇用し会社経営を行っています。株式市場は売り手と買い手の二者が存在し、買い手は安い時に株を購入し、売り手は逆に高値の時に株の売却を目論むシステムとなっています。

このことから、株式市場は売り手と買い手の「欲動の市場」になっている側面が強くあります。しかし、株式市場の運営が売り買いの欲動の場だけになっていたのでは市場が荒れて機能不全となり、その結果、企業は運転資金に枯渇し、健全な資本主義の維持、発展は覚束なくなるものです。

健全な資本主義の維持には、株式市場の健全化が必要となりますが、そのため資本主義は、市場を、完全競争のルールを備えた仮説市場にする必要がありました。株式市場における完全競争の基本的ルールは、①市場参加者は力が突出した者だけでなく、力の均衡した多数の需要者と供給者とする。②市場の参入者は参入、退出の自由がある。さらに③で市場の情報は何人も平等に得ることができるとしていますが、株式市場は三つの条件で運営されている仮説市場です。

株式市場における完全競争の理論はアダム・スミスが提唱したとされていますが、完全競争が実施されて二百年以上も経過しており、完全競争のルールは、現在でも大筋で維持されています。

資本主義の根幹をなし、且つ欲動の場となっている株式市場が仮説のルールで運営されている事実に驚きもしますが、欧米人にとって仮説は一時凌ぎの仮設でなく、守るべく基本方針となっています。このことから資本主義社会は仮説を前提とする社会と言えます。

ところが、現実の日本の株式市場には六〇%~七〇%の金額を欧米人が投入していると言われています。日本の資本主義の根幹を支える株式市場に欧米資金が多く流入する現実は、見方によれば異常であり、私には恐ろしくさえ映ります。日本の株式市場に欧米勢の資金が六割~七割も入っている状況は、日本の経済力を欧米人が認めているその証と見る向きもありますが、私は仮説を忌み嫌い、理解しない日本人の性向が株式市場にも反映していると思います。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『特性を活かして生きる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。