ヒョンソクは依然として動かなかった。すると彼の父は、ヒョンソクの肩に木の棒を振り下ろした。チュ先生が慌てて仲裁に入り、ヨンジュの腕を掴んだ。ヨンジュがチュ先生を荒々しく押しやると、チュ先生は壁に突き飛ばされた。

チュ先生が床にくずおれるとヨンミは彼の元へ駆け寄った。ヒョンソクが立ち上がった。するとヨンジュの怒りは少し静まった。だが、彼のとどめの台詞は残忍で、息子よりもチュ先生を侮蔑する、悪意に満ちた言葉だった。

「数百の音階を解するお前が、なぜこんな、手足の指を合わせたほどの音階しか出せない劣等な楽器で時間をむだにするんだ」

ヒョンソクが反抗的な態度で楽譜を集めて鞄にしまうと、ヨンジュの怒りが再燃した。ヨンジュはヒョンソクの鞄から乱暴に一冊の楽譜を取り出し、それを細かく引き裂いた。ヒョンソクは憎しみと絶望の目で父を見つめ、立ち尽くしていた。

ヨンジュはヒョンソクの襟首を掴んだ。彼はヒョンソクをドアまで引きずっていった。ヨンミは困惑しながら、慌てて彼らのあとを追った。打ちひしがれた彼女の顔には、ヒョンソクに対する深い哀れみがあふれていた。

6 現在

病院

ヒョンソクはベッドに横たわって眠っていた。ヨンミは長いことヒョンソクを見つめていた。

だれかがドアをノックした。ヨンミが答えた。「どうぞ」看護師が現れ、何かを運んできた。

「警察から預かりました。ヒョンソクさんの私物です」

箱と鞄が二つ。ヨンミは中身を確かめようと歩いていった。箱には壊れたヘグムが入っていた。鞄には血のついた衣服が入っているのが見えた。彼女は恐くなった。

鞄から何かが落ちた。それはヒョンソクの財布で、紙幣がこぼれ落ちて床に散らばっていた。彼女が紙幣を集めて財布に戻している時に、一枚の写真が彼女の目に留まった。それは彼女自身の、三十年前の写真だった。写真を手に取り、じっと見つめる。彼女の顔に深い悲哀と懐旧の念が表れた……心の奥から広がる哀愁が、彼女を満たした。

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