6 現在

病院

彼女とヒョンソクが、遠い昔に、どんな恋愛をした仲だったのか、彼女は考えていた。

辛い恋……人目を忍ばなければならない恋だった。彼らのお互いへの愛は、この宇宙全体が数百万年を経て深く創造されたように神聖なものだった。彼女はそれが、その恋がどんなに美しいものだったか覚えていた。そして、歳月を経た今、彼女はまた彼と会った。

彼に再会した今日、彼女は悲劇的な日になったかもしれないと考えたが、同時に思いがけない幸せが自身の人生に戻ってきたとも考えた。では、これは彼女の運命なのだろうか。彼女の人生にヒョンソクが入ってくることは……ヨンミは自分の写真をまた見つめた。

突然、執拗に鳴る携帯電話の音で、彼女は現実に引き戻された。彼女は電話を持って急いで病室から出た。彼女が部屋を出たその時、ヒョンソクのまぶたがわずかに震えた。

「もしもし」ヨンミは言った。

「どこにいるんだ」ソンジェからの電話だった。

「ごめんなさい。病院にいるから電話できなかったの」

「病院?」

「ええ。ちょっと問題が起こって。私の知人が緊急入院したのよ」

一瞬、ソンジェは何も言うことができなかった。ヨンミが言った。

「ほんとうにごめんなさい。お母さまはもう到着なさった?」

「ああ、着いている」

彼女はソンジェの声から一瞬の怒りを感じ取った……。

「ソンジェ、ごめんなさい。すべて私が悪いわ。ほんとうにごめんなさい」

「ここに来られないと言っているのか?」

「だれが入院しているのか知らないがその人がきみの父親じゃないなら、きみはここにいるべきだ。私の身にもなってくれ」

そう言ってソンジェは電話を切った。ヨンミはしばらくの間、電話を握りしめながらじっと見つめる。ソンジェの怒った顔が浮かぶ。彼女はソンジェの母に会いにいかなくてはと考えていた。しかし、彼女はどうしてもヒョンソクのベッドの横に戻りたいと、そう考えてもいた……。