しかし、1990年代中頃からのIT革命の進展で物流は大きく変わることになった。それまでの物流で「イメージがわかない」「ブラックボックス化している」といわれてきた部分が一挙に可視化されることになったのである。

「物流は最後の暗黒大陸である」とは経営の神様といわれたピーター・ドラッカーの言葉である。「物流は大いなるブラックボックスだがやがてそのブラックボックスも可視化のときを迎える」

ドラッカーはだいたいこのようなことをいって、21世紀の物流の現況を予言しながらこの世を去ったのである。

そして、ドラッカーの予言通り、物流は21世紀になると、情報革命の波に乗りながら大きく可視化への舵を取ることになったのである。

アフターコロナの時勢と相性のいいロジスティクス思考

コロナ禍以降のニューノーマル時代のライフスタイルやビジネスモデルとロジスティクスの考え方との相性がきわめてよい。

昭和、平成の「古き良き時代」とは異なり、デジタル化された現代社会は効率性にだれもが注目する。

「理屈には合わないが、面白そうだから企画にしてみよう」「なんとなくだが、これとあれを組み合わせてみたら面白いんじゃないか」といった発想は昭和、平成ならばともかく、令和では受け入れられないだろう。「きちんとした根拠を示して、成功に至るプロセスやタイムテーブルを明らかにしながらビジネスを展開していく」といった思考回路が求められている。そうでなければプログラムに落とし込んでの最適化を実現するのが難しくなることも少なくない。

そしてこうした思考ロジックは商品開発や営業にも取り入れられているが、モノの流れを緻密(ちみつ)に想定し、ムダ、ムラ、ムリを徹底的に省く最先端のロジスティクスではより高度に実践されていくことになる。

物流が進化を遂げたロジスティクスになると、標準化やモデル化、数式化で非常に高度なソリューションを提供できるのである。

物流は現場の勘と経験で継承されてきたオーラルセオリーの体系化かもしれないが、物流が高い戦略性を経てロジスティクスへと進化するなかで、応用工学的な発想が実務についても求められるようになってきたのである。