1 情報革命からシン・物流革命へ

物流大綱で明確化された我が国の物流の未来図

日本の物流政策は閣議決定される「総合物流施策大綱」をもとに進められている。1997年に第1次大綱が発表されて以来、コロナ禍で第7次大綱が発表された。3つの柱から構成されている。

(一)物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは物流・ロジスティクス領域でデジタル技術やそれを応用してつくり上げた物流のビジネスモデルで組織改革を行ったり、業績を改善したりすることをいう。

たとえば、ロジスティクスドローンやトラックの隊列走行などが物流DXを推進する有力なツールとなる。また、そうした徹底的なデジタル化を推進するにあたっては高度なレベルでの標準化も必要不可欠となる。

コンテナ、パレットなどの物流容器のサイズの統一などの「モノの標準化」だけではなく、検品、ピッキング、仕分けなどの物流現場の作業工程の手順についてもマニュアルや手順書を作成したうえでの標準化が必須になる。つまりデジタル技術を効率的に駆使してサプライチェーン全体を最適化していくという考え方である。

なお、サプライチェーン全体の最適化は、流通在庫のムダ、ムラ、ムリを省いた平準化と情報共有に立脚することになる。

(二)労働力不足対策と物流構造改革の推進

物流・ロジスティクス業界は少子高齢化や若者の3K職敬遠などの世相を反映し、労働者離れ、労働力不足に陥っている。その解決策として、物流従事者が「物流を魅力ある職業と感じられるようにする」という方向性が打ち出されてきた。ホワイト物流※1を推進し、3K職場からの脱却を推進していくというわけである。荷主企業や物流事業者などが相互協力し、物流従事者の労働環境の改善に取り組んでいくのである。

貨物自動車運送事業法(貨運法)では荷主サイドが物流事業者に必要以上に安い運賃を強いたり、行き過ぎた多頻度小口配送などによる過積載、過密運行、過労運転などを要求したりすることは処罰の対象になる。少子高齢化によるドライバー不足解消などの対策として力を入れる物流事業者の働き方改革やコンプライアンス(法令遵守)の確保などをバックアップすることが狙いとなっている。荷主と物流事業者がウィンウィンの関係のもとにホワイト物流を構築していくことが最終的な目標とされているのである。


※1:ドライバーや物流の現場作業者などの負担を軽減した物流の枠組みのこと。荷待ち時間、荷役時間などの短縮や効率化、物流現場での安全面の強化などに力が入れられる。