ヒョンソクが崖の下に落下し始めるのと同時に、崖の上に置いてきた二つの鞄が、彼の体に絡まっている弦と紐とによって引き寄せられていった。

引き寄せられた鞄は二つとも、断崖の中ほどに生えていた木から伸びる枝々に引っかかった。それがヒョンソクの落下を止め、彼の体は強い衝撃とともに崖面に二度叩きつけられた。彼の首と腰は、落下の衝撃をまともに食らった。

ヒョンソクは叫んでいた。断崖に衝突したあと、彼の片脚は木に引っかかり、彼は、湖面よりもはるか上方で、逆さまの状態で宙吊りになっていた。肩の怪我から顔へと血が流れてきた。体はどこも切り傷だらけで出血していた。彼の手が肩に伸び、手を離すと、手のひらは血と剥がれた皮膚で覆われていた。彼は宙づりのまま、腰の痛む場所を触ろうとしたが、手が届かなかった。彼の手は、空中で大きく振り回されていた。

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