サボリ出してもう五十分になっていたが、関係ない、俺は再び建築課の東課長に電話を掛けた。出たのは若い感じの男で、ちょっとお待ちください、ただ今取り継ぎます、と役人は言い、しばらくして電話に出たのは同じ男で、ただ今東は外出しております、と返ってきた。俺が相手と知って東は対応を拒否している気がしたが、仕方がないからその若い男に訊ねてみた。

市のホームページには図書館新設の情報はないし、入札案件には解体工事しかない、これはどういうことなのか、松平市はもはや新たな建築工事を行うつもりはないのか? と。

それに対する答えは予想通り、図書館の案件はこれから載せられるだろうし、解体工事の入札が重なっているのはただの偶然であり、建築課が新築の許可を出さないなどということはない、の一点張りだ。

「ほんといったい、何が裏で進んでるの? 隠してないで、教えてくれないかな?」

俺はちょっとだけ、拝むようにへりくだってみた。

「何も、進んでないと思いますけど。そもそも自分、まだペエペエなんで、何かあっても教えてもらえる立場でもないですし。てか、どうして空中さんは、そんなことが気になるんですか?」

最後にややタメ口となって、若い役人は逆に訊ねてくる。そう言われると、俺には返す言葉がない。俺は置き薬の営業マンであって、建設屋のそれではない。建たないからといって、何も困ることはないのだ。おそらくこの若い役人にとって、俺は変人でありクレーマーの類でしかないのだろう。もういい、と静かに呟いて、俺は電話を切った。

「やべ、もう間に合わねえ!」慌てて呟き、次の営業先に向けて、俺は営業車を発進させる。