第2部 ハツカネズミの捕獲例

クマネズミは足元が急に不安定になることを嫌うが、ハツカネズミは全く気にしない。シーソーを使った初期の仕掛けはクマネズミが全く入ろうとしない仕掛けなのだが、ハツカネズミとドブネズミでは有効だった。構造が単純な上に足元を気にしない生き物に有効な捕獲方法なのだから、連続捕獲できる構造に作り替えれば、それなりに役立つ捕獲具になると思って作ってみた。この仕掛けは日本国内とアメリカで特許になっている。

テストのつもりで捕獲を始めたのだが、捕獲している間にも不思議に思うことがいくつかあって面白くなり、1つの場所で160頭も捕獲してしまった。それぞれの個体データが揃っていて、捕獲までの日数がデータに加わっているのだから、ネズミたちがどのような順で捕獲具に入ったかが分かる。

暇な時にデータを調べ始めると、次々と謎が現れた。謎とは理解しがたいハツカネズミの行動についての謎だ。理解できないのは、その習性を知らないからであって、データの中に未知の習性が隠されていることを示している。

クマネズミの例の時と同じように希少な情報のはずだという思いが常にあったので、仕事をする傍らで3年以上の間夢中になってこつこつとデータ解析を行った。いくつかの謎を解くために用いたグラフの多くは恐らく今までに誰も目にしたことのないグラフばかりである。ハツカネズミについて調べているうちに、クマネズミよりも面白く感じ始めた

私は学者でも研究者でもない一般人なのだが、知的探求心という点では誰にも負けないつもりである。ハツカネズミについても珍しい観察結果が得られたと思っているので、途中の謎解きを含め、その詳細について述べる。