【前回の記事を読む】「鳴ったぁ!やったぁ~」生まれて初めて感動を覚えた瞬間とは

五、頭はここまで下げるんや! 初めて勤務した会社の主任より

「棚橋。電話が鳴ってるやん。早く取らんか! 何してるんや!」

と怒鳴られ、後頭部を平手で「バチッ」叩かれた。痛かった。

でも、じっとがまんした。現在ならパワハラで大きな問題になるが、昔はそれが当たり前だった。

「はい。すみません」

と言って

「もしもし。前田豊三郎商店でございます。毎度ありがとうございます」

と震えながらぎこちない言い方で応答した。

「○○の○○商店です。キッコーマン醤油5箱と松竹梅5箱注文するわ。それだけでいいから頼むわ」

と注文を受けた。

「毎度ありがとうございます。はい。分かりました」

とメモも取らずに電話を切った。U主任がすかさず

「今の電話はどこからの注文や。注文は何や?」

と聞かれた。商品名もまだしっかりと覚えてない。

「あの。○○の○○商店からの注文でした。キッコーマン醤油と松竹梅でした」

「それを何箱の注文や?」

と聞かれ電話で舞い上がっていたので肝心の数量を忘れてしまった。

「馬鹿者!」

また平手で後頭部をパチンと叩かれた。ぐっと我慢した。

「目の前にメモがあるのに何で書かないんや。何してるんや。お前。直ぐに○○商店へ電話して、注文を聞き直せ!」

とひどく、また怒鳴られた。折り返し○○商店へ電話し、お詫びして注文を取り直してU主任に報告した。

「棚橋いいか。電話が鳴ったら3回以内に取るんや。そして、注文先と注文品を必ずメモするんや。受けた内容は必ず復唱して相手に確認することや。分かったか」

と強く言われた。

「はい。分かりました。これから、そのようにします。すみません」

と詫びた。その後、私は「電話応対の話し方」をメモに書いて目の前に貼り、暫くそれを見ながら対応した。いつの間にか電話応対にも慣れてメモを見なくても言えるようになっていった。