戦後四、五年経つころからようやく人も物も回復の兆しを見せ始め、そこへ朝鮮戦争特需が加わって日本経済は息をふき返しつつあった。以前神林の会社で働いていて戦争を生き延びた船員も会社に戻って来た。彼はそれらの元船員を米軍の運搬船に貸し出した。彼は地元の信用金庫に融資を頼んだが、担保が少ないという理由で貸し渋られていた。窮余の策として目を付けたのは、同じ鶴前の海運会社を経営する乾(いぬい)芳雄(よしお)…
[連載]レッド・パープル
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小説『レッド・パープル』【第12回】そのこ+W
分家と立場が逆転…。だが、嫌がらせをしてきた男が死んでいるのが発見された
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小説『レッド・パープル』【第11回】そのこ+W
日本海有数の海運会社に成長させた辣腕事業家。あこぎなことも平気でやる男との噂が…
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小説『レッド・パープル』【第10回】そのこ+W
転校した中学校で日本は戦争に負けたんだ、と思い知らされる出来事があった
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小説『レッド・パープル』【第9回】そのこ+W
引っ越してきた町はあまりにも荒んでいた!医者の家だが衛生状態は他の家より悪かった
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小説『レッド・パープル』【第8回】そのこ+W
〝七千万総玉砕〞の呪縛から解かれた戦後。敗戦から三カ月後に父が戻ってきた
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小説『レッド・パープル』【第7回】そのこ+W
父親殺しの冤罪、疑念の火事、家族の裏切り、孤立無援の主人公は果たして
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小説『レッド・パープル』【第6回】そのこ+W
「親父殺しの犯人にされてしまうと思った」思わず逃げ出した隙に、家は炎に包まれていた…
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小説『レッド・パープル』【第5回】そのこ+W
ゼミ仲間の屋敷で研究会。思いがけないもてなしの理由とは?
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小説『レッド・パープル』【第4回】そのこ+W
戦後すぐの田舎風景に似合わぬ洋館。デザインの決め手は「周囲への威圧」
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小説『レッド・パープル』【第3回】そのこ+W
かけられた「父親殺しの嫌疑」…拘置所から届いた息子の訴え
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小説『レッド・パープル』【第2回】そのこ+W
【小説】「戦争の体験」――あの事件を避けて自分の青春を語ることは許されない
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小説『レッド・パープル』【新連載】そのこ+W
【小説】1951年の冬、田舎町の屋敷が燃えた…警察が示した見解とは