さて、二葉亭四迷は『浮雲』(明治二〇~二二年)を未完のままで放擲(ほうてき)した後、しばらく小説を書きませんでした。『浮雲』から二〇年近くを経た明治三九年(一九〇六年)、久しぶりに新聞連載の形で発表したのが『其面影』です。最初にこの小説の筋書きを簡単に説明しておきましょう。中年の大学講師である小野哲也は、若いときに学資を出してくれた家の婿養子となっていますが、家では妻の時子や義母とうまく行ってお…
[連載]「学歴」で読む日本近代文学
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第17回】三浦 淳
明治時代の「私立大学」は法律上は専門学校であり正式には大学ではなかった!?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第16回】三浦 淳
明治時代、日本初の女性雑誌創刊。女性は英語を教わることに熱かった!?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第15回】三浦 淳
『浮雲』を読んで現代の読者が戸惑うのは、主人公文三において書かれていないあること
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第14回】三浦 淳
ロシア語の実力に秀でていた二葉亭だが、卒業まであと少しの時点で退学してしまった
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第13回】三浦 淳
ロシアの圧力から日本を守らなければ、と考えた二葉亭四迷。ロシア語を学ぶ決意をする
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第12回】三浦 淳
二葉亭四迷、陸軍士官学校を受験するも3度の不合格。軍人を強く志望した理由とは?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第11回】三浦 淳
自由と平等の国と言うが…切り離せない「階級」と「進学」に気付いていた坪内逍遙
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第10回】三浦 淳
学生の話なのに「学校」を描かない?『当世書生気質』が備えた近代小説の特質とは
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第9回】三浦 淳
東京大学と並ぶ高等教育機関であった工部大学校…立ち上げの経緯とは
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第8回】三浦 淳
羊頭狗肉とは言えないが…当時の風俗を描く『当世書生気質』の問題点
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第7回】三浦 淳
逍遥の「頭と心の乖離」が招いた上巻と下巻の奇妙な齟齬
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第6回】三浦 淳
逍遙の小説理論はダーウィンの影響?進化論が文学に与えたものとは
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第5回】三浦 淳
日本文学の転換点。坪内逍遥が『小説神髄』で訴えたこととは?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第4回】三浦 淳
「進学に強い魅力がなかった」成立期から一転、東大が特権的な学校になったワケ
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第3回】三浦 淳
今でこそ日本のTOP大学だけど…成立期の東大を取り巻いた複雑な事情とは?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【第2回】三浦 淳
近代文学の先駆者・坪内逍遥が通った東京大学の前身「開成学校」って?
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評論『「学歴」で読む日本近代文学』【新連載】三浦 淳
「学校制度の近代化」のなかで教育を受けた、文豪・坪内逍遙の学歴