宇宙船の保守と管理は、長い宇宙飛行の間、人間がいない時間の方が遥かに長い。その期間はコンピューターが自ら自立して状況を判断し、危険や不測の事態に対処しなくてはならないので、自立思考型コンピューターがなくてはならない。それは、竹取村の海岸で生まれたわずか5センチほどの子亀が1匹で太平洋に向かって泳ぎだすのと同じである。

そこで働くロボットも自立して動き回り自ら補修をする能力が最低備わっていなくてはならない。ロボットと生物との違いは、自立再生能力があるかどうかである。ロボットは一度作られると壊れるまで動き、壊れるとそれでお終りになる。生物は何も教えなくても学ばなくても再生し続ける。ロボットにもこの再生能力を与えないと、何千年にも亘る補修維持活動はできない。

織田と堀内は、超大型3Dプリンターと機械部品製造ロボの組み合わせによりロボット再生問題を乗り越えることとした。ロボットが定期的に消耗部品を取り替える。エビやカニが古い殻を脱ぎ捨てて新しく生まれ変わるのと同じように、ロボットが自ら判断してパーツを取り替え、機能を維持するのである。

乙姫は1基ごとのロボットの機能管理をして最良の状態を作り出し、自動再生できない修理には百年に一度の再生人間の期間に補修するようにチェックしていかなくてはならない。このチェックリストを整備する作業も進める。