除退予測の傾向

上の話は実際に除退者になった学生の要因についてのものであるが、大学運営上重要なことは、既存学生への多様な教育支援システムを与件としてどの程度除退者が出現するか、すなわち除退予測を行うことである。丸山文裕によれば除退の生起を説明するモデルを次のように整理している注4

(1)教育達成モデル:学生の個人属性によって除退を説明するモデル

(2)カレッジ・インパクトモデル:教育機関の環境などによって除退を説明するモデル

(3)病院モデル:カレッジ・インパクトモデルの改良版。教育機関の環境などと学生の個人属性を組み合わせて除退を説明するモデル

(4)チャーターリングモデル:教育機関の環境などとその外的環境や社会構造の関連から除退を説明するモデル

そして、丸山は文科省『学校基本調査』から、「学生/教員比」「平均講義規模」「兼務/本務教員比」「学部規模」という4つの変数を定義し、これらを説明変数として退学者数ないしは退学率を被説明変数とした2つの回帰分析を行った。その結果は2つあり、第1に「学生/教員比」が高いほど、そして「平均講義規模」が大きいほど退学者数ないしは退学率が大きくなる(いずれもp<.01)。第2に、「学部規模」が大きいほど退学者数ないしは退学率が小さくなる(いずれもp<.01)、以上のことを明らかにした。

この結果から、丸山は日本の学生における退学行動がカレッジ・インパクトモデルよりも、チャーターリングモデルの方が適していると指摘した。


注4:丸山文裕「大学退学に対する大学環境要因の影響力の分析」『教育社会学研究』第39集、1984年、pp.140-153。