倒産してから一週間が過ぎた。なんとか米子さんたちは生きている。自分たちで作る食事は普段呆けていてもけっこうまともにできるものだ、おいしかった。

でも誰も来てくれないと心配していたら、大勢人が押し寄せてきた。この老人ホームの借金の取り立てに債権者が何かお金になるものが残っていないか見に来たのだ。玄関先で老人たちと債権者がもめている。

「ここにあるものは私たちの払ったお金で買ったものよ。持っていかれては私たちが生きていけないわ」

車いすの人も、杖をついた人もみんなで債権者を入れまいと並んで抗議した。

「そのうちマスコミが取材に来るわよ。年寄りをいじめると商売に影響すると思うわ」

「弁護士ももうすぐ着くころよ」

お米さんたちは必死だった。

「ババア相手だとやりにくいね。寝覚めが悪いから、今日は帰るか」

債権者たちはとりあえず引き上げていった。

「やった！」

お米さんたちは歓喜の声を上げた。

それからは、バザーを玄関前で開いた。お客さんはハイカーやひき売りのおじさんと少なかったがカルチャー教室で作った物を並べ、時には赤飯やパンなど食べ物も並べた。

けっこう好評で気を良くしていたら、今度は電気を止められてしまった。経営者が電気代を滞納していたのだ。真っ暗なうえ、とても寒い。布団にくるまって震えてしまった。

「戦争中を思い出すわね」

ろうそくの明かりに初めてしみじみ話しあった。ホームに入って初めて本音で話せた気がした。

「生き残ったのですもの、今度もがんばってみましょうよ」

みんなでうなずきあった。