時速約二五〇キロ、新幹線で南下

ヴェルニゲローデからゴスラーで降りないでヒルデスハイムを見物することにした。平原に出ると車窓から、青空を背景にあの白い発電風車が林立しているのが望めた。愛知万博のトヨタ館の電力が田原の発電風車一基分という。この光景は現代ドイツの象徴と言えよう。

ヒルデスハイムで降りる。この街は大きな戦禍を受けたが一部は残った。AD八〇〇年代に司教座が置かれた古都である。大聖堂とミヒャエル教会が世界遺産に登録されている。マルクトの広場の華麗さとミヒャエル教会のサラセン模様の不思議さが印象に残った。

この日はゴスラーへ戻って一泊し、翌日いよいよ南ドイツへ疾走する。八月十七日ゴスラーを出てハノーバーに着き、乗り換え時間があったので駅前広場へ出る。なかなか賑やかな都市である。

愛知万博以前にここで万博が行われたが赤字だったという。理由は夏季にドイツ人がバカンスに行ってしまったことと、ホテルがやみくもに値上げしたことだという。しかし、環境問題を最初に取り上げたのはここの万博だそうだ。

ここからICE(都市間特急)のバーゼル方面行きで出発する。新幹線規格の線路なので猛烈に速く、時速二五〇キロくらいだろうか。丘も山もトンネルでぶち抜いて、真っ直ぐ走る。メルヘン街道やゲーテ街道が綾なす地域を抜け出てフランクフルトに停まった。

更に南に走り、ハノーバーから三時間二十分で南西ドイツのカールスルーエに着き、ここでパリ行きの国際特急へ乗り換えた。列車は二時間で豊かに流れるライン河の国境を越え、フランスへ入ったと思ったらすぐにアルザスの国境の都市ストラスブールに午後六時をちょうどに到着、下車した。

なぜストラスブールへ寄る気になったのか。これはひとえにドクターが美味いアルザス白ワインを飲みたいからだったが、フランスをちょっとのぞいたのは意外に息抜きになった。