通算して14ホール目、そのミドルコースでドラコンをすることになった。ドラコンといっても勝者がみんなにノンアルコールビールを1本おごるといった、いわばお遊びである。でもみんな結構必死になる。必死になって力が入るから、4人中2人は大概大きく曲げる。でもそれが楽しいらしいのだ。

敬一さんは本気で狙っていた。ご自慢のドライバーを手にした彼は、渾身の力を込めて、もちろんスイングの崩れには自分なりに気をつけて、ツーピースディスタンス系のゴルフボールを叩いた。そして左へ大きく曲げてしまった。明らかに余計な力が入ってフックがかかってしまったボールとなった。

「やっちゃった……、俺やっぱ、ドライバーはダメ」

毎回ドラコンでは勝利を諦めて曲げないことを第一にいくので、いつもしっかりフェアウエイキープなのだが、今回はOBは免れたけれども、コース左の林の中にボールは消えていった。

「ああ、これでベストスコア無理かも。リカバリーを決めていかないと。早めにボールを探して、次の落とし所をしっかり考えなきゃ」

そう思った敬一さんは皆が打ち終わって、また今回も聡さんが勝者の様子であることを確認してから、いつもならカートに乗って近くまで行ってからボールを探すところを、一目散に走っていった。

「敬ちゃん、そんなに急がなくてもいいよ。後ろの組遅れ気味だしゆっくり探せばいいよ」

せっかく聡さんが声をかけてくれているのだが、慌てていた敬一さんの耳には入らずじまい。体のだるさも無視して、坂を駆け下りていった。

その途中だった。敬一さんは喉が詰まるような感じを自覚した。そして灼熱感が喉にこみ上げてきた。少々苦しくなってきたので、歩みを緩めた彼の体に、明らかに異変が起こり始めた。胸が苦しいのである。痛いというより、苦しい感じ、息がしにくくなってきたのだ。そして、立ち止まった瞬間にその場でうずくまってしまった。

救急車の中で救急隊の男性が耳元で叫んでいる。

「田中さん、わかりますか? 田中さん、わかりますか? わかったら私の右手、握ってくだ……」

何となく聞こえてきたざわつきや叫び声が、聞こえては消え、聞こえては消え。

敬一さんはそれから意識を回復することなく、市民病院に担ぎ込まれた。敬一さんは心筋梗塞に見舞われたのである。

【余計なお世話の豆知識】
マンシングウエア
アメリカのゴルフウエアをメインとしたスポーツ用品のブランド名。ロゴマークはペンギンである。日本では、1964年にデサント社が総販売元になりデビューを果たした。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『改訂版「死に方」教本』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。