書くときに活かされる”付箋の記憶”

論述的な文章を書くときには、参考文献というか参考図書が必要です。そのためには、かすかな記憶を頼りに関連図書を引っ張り出してこられるかが重要になります。そこで活きてくるのが、貼っておいた付箋です。

「あんなことを論じたいけれど、たしか似たようなことを説明していた本があったな」という記憶があれば、その記憶をたどって該当の本を取り出し、付箋の箇所を眺めていきます。そして、目当ての文章が見つかった場合は周辺を読み、著者がどのような過程を経てこの結論を導いているかをチェックし、自分の思考内容と比較します。

その結果、引用するならするし、そこまででないなら表現方法だけを真似(まね)るといった対応を考えます。使えないようなら別の本をあたります。この行動を繰り返すことで、洞察の利いた説得力のある文章を練り上げることができるのです。

たとえば、いま私の手元に、佐藤優さんの『読書の技法』(東洋経済新報社)があります。なかを見ると、以下の文章に付箋が貼ってありました。

普通の速読においては、内容を細かく理解する必要もなければ、すべてを記憶する必要もない。内容を大雑把に理解・記憶し、「あの本のあの部分に、こういうことが書かれていた」「あの箇所に当たれば、あの情報が出てくる」という「インデックス」を頭の中に整理して作ることが最も重要になる

これを改変して、

普通の読書においては、……。内容を大雑把に理解・記憶し、「あの本のあの部分に、こういうことが書かれていた」「あの箇所に当たれば、あの情報が出てくる」という”付箋の記憶”を頭のなかに残しておくことが重要なのだ

という感じで、相応(ふさわ)しい内容として、本項のなかにこの文章を組み込むことができました―もう少し表現を変えないと剽窃(ひょうせつ)になりますかね。