書き手のなかには、付箋を貼る代わりにノートに書き留めておいたり、読了メモのようなものを残しておいたりする人もいます。もちろんそれらが実践できれば理想ですが、なかなかそこまでするのは手間ですし、外出先では面倒でしょう。そこで、せめて”付箋を貼っておく”というわずか一手間―0.3手間くらい―をかけるだけでも、その本における、あとからの役立ち方が格段に違ってくるのです。

貼ったままの本が、数年、十数年、あるいは何十年か経ったとして、仮に読み返す機会が巡ってきたとします。付箋の部分を読んだとき、その表現からにじみ出る当時の思い出が、懐かしく(よみがえ)ってくることでしょう。

付け足しとして言うならば、付箋の束そのものを”しおり”にすることで、有効に持ち運びができます。もし、読んだ本に付箋が一枚も貼られなかったら……。再利用することはないと思いますので、残念ながらご縁がなかったということで、迷わずリサイクルショップに引き取ってもらいましょう。

まとめ

せっかく読んだ本の記憶を少しでも鈍らせないためと、読後、本の内容を引用しやすくするためという点で、読み方の工夫について触れました。要は、「本の内容に再アクセスするための痕跡を残すことが大切」ということを言いたいだけで、方法自体は何も特別なことではありません。

でも、実際にはそれがなかなか面倒ですし、そもそも記憶に残す必要性はそれほど感じないものです。楽しく本を読むだけでしたら、そんな手間をかける必要はないのですが、SNSやブログやオンライン小説の時代ですから、もしかしたら何かの拍子に書き物に目覚めるかもしれません。

実際、ときどき”読書リレー”なるものがSNS上に立ち上がります。直近では、二〇二〇年三月頃から『七日間ブックカバーチャレンジ』が発生しました。「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、好きな本の表紙画像をFacebookへ七日間アップする」というようなものでした。読むことから書くことへと、一段高みを見据えた読書を目指すのもいいのではないかと思います。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『非読書家のための読書論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。