その柔らかな掌の肌触りは、触れられているところは主に髪だけなのに、頭から顔まで皮膚が敏感になっていき、肌全体にわたって直接愛撫を受けているような心地よさだった。肌と肌をなるべく全身にわたって合わせるといった皮膚の接触とか、肌を特定の部分で密着させるというような可能な限りのスキンシップを恭子は楽しくやっていた。

恭子との密会を重ねていくごとに彼女の皮膚感覚と独特な愛撫の仕方に徐々に馴らされていった。元々彼は恭子のような女性に合うタイプの男だったのかもしれない。女性からの強烈なスキンシップや性交への執着ということになると、彼は学生時代に恭子とはまったく正反対のタイプと知り合ったことを思い出してしまう。

およそ三カ月の短いつき合いだったが、この女性は彼にとってはまさに通常の意味で、性的欲動の強い女と映った。知り合ってから性交を持つ関係になったのも早く、彼女は最初から貪欲でオルガスムスを十分に得たはずだと来栖にも感じ取れたほどだったが、殆ど毎回二度目の性交を求めた。男のほうの性機能の特徴でいえば、無理に要求され萎えてしまっているものを無理に勃起させても何か亀頭のあたりにピリピリと少し痛みが走るだけだ。

ペニスから脳全体に伝わる感覚としては、今快楽をむさぼっているとか性に耽溺しているというようなものではなく、単に無性にこそばゆいという気持ちに多少の快感と痛みが加わるだけである。ことにこの短いつき合いに終わった場合では、彼の努力が功を奏さないと見てとると、女のほうは自身の手と口唇で無理やりに彼を奮い立たせることまでやってのけた。今や触れてもらいたくない皮膚に触れられ、突発的に笑いたくなるような気分になることがある。

それを無理やりに抑えている自身の体からは滑稽感というかやり切れなさというものしか伝えられないものだ。この時の感情など異性の相手には感得しようがない。また男のほうには一種の焦燥感が残るだけだ。