2.「青春!」

毎日のウォーキングでよく通る道すがらの、近くにある中学校の校舎の向かい側に、道路に面してその学校のテニスコートが何面かある。早朝も夕方も、そこでクラブ活動をしている熱心な生徒たちがたくさん居て、ウォーキング途中、生徒たちと出会えば、僕は軽く挨拶をするのだが……。

そのテニスコートの後ろには、こんもりとした森が広がっていた。一年でも特に夏の暑い日などには、生徒たちはその林というか森の木陰で一休みしているが、そこに近づいて行って見ると、その森の中に入って行く小さな小径が奥まで続いていた。その中の方を少し(のぞ)いて見ると、薄暗くてゴミが散乱していて気味が悪いくらいなのだが……。

僕は、ウォーキングの出発が夕方少し遅くなって出掛けた時にそこを通ると、その森の中に人が居るようだったので、ちょっと覗いてみた。そうするとテニスウェア姿の中学生くらいの男女がいて、PTAに報告しなければいけないような事をしていた。だが僕はイヤミなおじさん……って思われてはいけないと思い、そのまま静かに、ウォーキングの先を急いだのだった。

だが、何日か後に、また、僕がそこを同じようにウォーキングで通り掛かると、例の森の中に入って行く小径の入口は柵で仕切られていて、おまけに周囲には〈(いのしし)除け〉のような100Ⅴの電線が張り巡らされていた。そして「注意!」と書かれた札も立てかけられてあった。それでその森の奥にはもう入れなくなっていた。

僕は、その行為を大業過ぎるな~ァ、と思ったが、(すご)く奥手のPTA関係者か校長先生か誰かは知らんが、かなり(ゆが)んだ(ひね)くれた感覚で指図した事だろう。それにしても100Ⅴの電線を張り巡らせるまでするとは、僕は鬼だ! と思った。それに、僕が先日みかけたそこでの若い男女の行為を僕はどこにも知らせてはいないので、誰が? と思い不思議でもあったが……。

それに最近の保健体育での性教育の授業は、僕の若かりし頃よりかなり進んでいて親たちの色々な心配はいらないほどとも聞いている。それで……そんな指図を鬼だと思ったのである。青春真っ盛りの生徒たちがとても可哀そうに思えた。それに付いての理由を示す立て看板等は周辺に特には見あたらなかった。だが、その辺りのカップヌードルと菓子パンのビニール袋等の散乱していたゴミは、奇麗に片付けられていた。その点は評価出来るが。