メンバーの難題に積極的に取り組みモラルUPを

先ほどの一人で残業をしていたメンバーですが、その後は指示した通りに動いてくれるようになりました。結果的に後の班に迷惑をかけられないということを守ってくれたと思います。彼は能力的には低いメンバーでしたが、努力をしていることが一目でわかりました。

そこで私は、努力してレベルが上がってきたら当然月次評価(頑張った人に給料をプラス評価する仕組み)を上げるべきと思い、月次評価を上げる予定だったレベルの高い年配者に、今回は彼が頑張っているので代わりに上げてやりたいと相談したら「ぜひお願いします。あいつは、毎日努力して頑張っているから上げてほしい」と応援してくれました。その結果、彼はレベルが少しずつ上がってきました。

普段、レベルの高い人はいつも高いが、一方でレベルの低い人は人一倍努力しないとうまくいきません。つまり責任感のある人は、最初は能力は低くても努力するので、レベルは少しずつでも上がってくるものだと思いました。そういうときは逃さずに月次評価を上げてやるべきと思います。これでモラルが上がり底上げができれば、全体のレベルも自然と上がってきます。

別のメンバーのお話です。あるメンバーに大変な出来事がありました。本人から相談があるので聞いてほしいと連絡が入りました。話を聞いてみると、実は早期退職したいという相談でした。なんで?と聞くと、実は自分の子供が、数人の友人やサラ金からお金を借りて返さないので訴えると言われている、ということでした。

確認すると、その金額は合計で600万円、今返せるお金ではない。そのため、早期退職して退職金を当てたいというのです。銀行から借りたらと言ったのですが、「保証人が要るので恥をさらすことにもなり、それよりも退職金のほうがよいのでとにかくお願いします」と本人は決め込んでいました。会社から借りたらと言っても、「いやいいです。早期退職のほうが余計にもらえるのでお願いします」の一点張りでした。

当時会社には早期退職すると約400万円ほど退職金に加算される仕組みがありました。本人の決心は固いようでした。しかし、そのあとの仕事を見つけることが難しい時代だったので、「わかりました。上司に雇ってくれるように相談します。許可が出たら、アルバイトになりますが、また同じ仕事ができますか」と聞いたら「ぜひお願いします」との返事でした。このやり方が、結果的に良かったのかどうかわかりませんが、本人はいつもと変わらずに仕事をしてくれました。

私は会社でいろんな経験をさせてもらいました。完璧に対応できたのかは今でもわかりません。ただ言えることは、人を預かっていればさまざまな問題が降りかかってきます。

しかしこれは人生での勉強だと思います。たくさんの経験を積むことで視野が広くなり、どんな火の粉が降りかかろうと切り抜けることができるのです。経験に勝るものはないと思いました。難題から逃げずに、むしろ立ち向かっていく勇気が必要だと思いました。