ししまい

正月休みが終わると、2才児以上のクラスでは凧作りが始まります。完成すると、それぞれのクラスで園庭あるいは園の近くの大きい公園に出かけて、凧あげを楽しみます。

そして、「ししまい」の飾りつけのある大きい部屋に全クラスの子どもたちが集まります。私がこままわしを披露し、先生たちが着物を着て羽根つきをしたり、「人羽織」をします。5才児クラスの子どもたちは大判かるた取りをします。

それらが終わったあと、“しし”がおはやしの音楽で登場します。

大きな唐草もようのふろしきと手作りの立派な“ししがしら”をかぶり、白足袋とわらぞうり、ももひきをはいた2人の先生が、おはやしに合わせて、“ししおどり”と寸劇をします。そのあと、子どもたち全員と先生たちの頭をかんでまわります。そのとき、ししに頭をかんでもらうとかしこく元気になることを進行役の先生が強調します。

ししのなかには先生2人が入っていることを前もって言わず、先生の顔を見せないようにします。

1才児、2才児クラスの子どもたちのほとんどは大泣きをして担任の先生にしがみつきます。大泣きする子には個人差があり、3才児、4才児、5才児の子も少数ですが泣きます。4才児、5才児の子どもたちは神妙な顔つきになって、ししに頭をかんでもらっています。

節分

山からみごとな扮装の赤オニ、青オニ(2人の先生)が金棒を持って園にやって来ます。オニたちは、各保育室をまわって各クラスで暴れまわります。

その後、子どもたちは数日前にクラスで製作したお面を頭につけて園庭に出ます。そして、子どもたちの前で桃太郎に扮した先生と赤オニ・青オニが寸劇を演じます。暴れまわったオニは、子どもたちに豆を投げられ、退治されてしまうのですが、最後には仲なおりをします。

この行事でもクラスごとに赤オニ・青オニと記念写真を撮ります。その後、オニは子どもたちに見送られて山に帰って行きます。

オニと豆をまく子どもたち

以上、当園で現在行われている代表的な年中行事を紹介させていただきました。

なかでも、「星まつり」や「夏まつり」、「ししまい」は約38年前から現在まで行われているものです。私自身、それほどの考えもなくただ漠然と、子どもたちが育つ地域社会のなかに伝統文化がなくなっていることから、保育園で伝統文化に触れさせたいと考えたのです。これらは、積極的に保育を進める当園の先生たちによって、現在行われている形になっています。

ひるがえって、もうずっと以前から日本の小学校・幼稚園・保育園では、「よい思い出をつくる」といったことばがよく使われるようになり、テレビなどでもよく耳にするようになりました。

実際に小学校や幼稚園・保育園などで行われるうんどう会などを見学して感じるのは、その内容の貧弱さや質の低下です。小学校や幼稚園のうんどう会は、プログラム名のかっこよさと実際の内容とのギャップが大きいことが多くなっています。

「よい思い出をつくる」「自主性を大切にする」「保護者参加」ということばのもとに行われているいろいろな行事の内容の貧弱さを、多くの教育関係者、保育関係者は感じていないように思います。当園では相当以前から、「思い出」ということばをなるべく使わないようにしています。子どもたちがどのような内容を体験すればこころが豊かになるのか、を意識して行事に取り組んでいます。