ドイツの民族主義

低地ドイツ人のメランコリーという気性は暗鬱な冬と関連するが、ファジーな表現ができない論理的なドイツ語の文体とも関連する。

彼らは言語で表現できないので、内向的で憂鬱になるが、唯一、音楽に救いを見出す。

ベートーベンやブラームスやリヒャルト・ワーグナーは人間感情のファジーなひだを世界中に普遍的にもたせることに成功した。

それに対し大衆音楽ではM・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」などにまだ、はっきりとメランコリーの影を示している。

そんなドイツ人には先に述べたように古代ローマへ融合されなかったこともあり、南国イタリアへの憧れが感じられる。ゲーテのイタリア紀行などは代表的なものだ。

東西統一の原因を東ドイツ人の強いイタリア志向に原因をもとめる説もある。ところがベルリンの南五百キロ、高地ドイツ、バイエルンの州都ミュンヘンあたりになると相当南国の明るさを感じさせる。

メランコリックでなくゲミュートリッヒという言葉がふさわしい。

この街のビアホール「ホフブロイハウス」でビールの大気炎の中からナチスが誕生したという伝説も生まれてくる。ヒトラーについては、多くを語られているが、ウィーンで浮浪者の仲間に入った頃に、無神論者になったという。

一八世紀のフランス大革命で無神論者が政権を一時奪って以来、キリスト教が大ショックを受けてニーチェのような無神論を装った哲学がドイツでも出現していた。

ヒトラーはニーチェの思想を換骨奪胎して独学の美学をもってナチズムを組織する。

ある日ヒトラーは

「キリスト教と梅毒を知らなかった古代の方が、今よりもましな時代だった」

と語っている(高橋義人『ドイツ人のこころ』岩波新書)。