私見だが二〇世紀の悲劇は、ヒトラーやスターリンのような無神論者が一国を指導したことである。

国際平和を念じ、民の心をこころとするのはもちろん、宇宙や神の摂理を知り、穏健な信仰を持つ人こそ真の宰相だと思うが、二一世紀にかける私の儚い夢であろうか。

私が幼稚園の頃、父に連れられて毎週、納屋橋のニュース映画劇場へ行ったものだ。「ベルリン発同盟」とラジオが言っていた頃だ。

いつも、冒頭に「タンホイザーの大行進曲」か「ワルキューレの騎行」が鳴り渡り、集団美のナチス軍隊の行進、そして大戦果がスクリーンを流れた。

ワーグナーをナチスに売り込んだのは未亡人のコジマ(リストの娘)と言われる。

また、ナチスにワーグナーの「ニーベルングの指環」で表現されるゲルマン古神話を導入したのは、宣伝相ゲッベルスとの説が有力である。ヒトラーとニーチェ、ワーグナーという構図は不思議である。

旅の三カ月前にドイツ憲法が改正されて、移住外国人とくに東欧難民の規制に成功したという。これは一応スキンヘッドのネオナチの成功と言われている。

今ドイツ人が幸福そうにみえる一因は、これによりドイツの暫くの安定が保たれたことにあるとの風評がある。

もちろん、経済の遅れた東欧・ロシアにとっても、世界にとってもこの上ない危険な徴候である。ドイツにまたあの国家中心の民族主義の悪夢が再来しないことを祈りたい。

国内どこでもボーダーレスが成功しているが、民族間のボーダーは却って高くなっている感が怖い。

さて、このヒトラーにワーグナーにも縁のある、しかし至極明るいミュンヘンへやってきた。