☆P/L「売上原価」(フルコスティング:FC・ダイレクトコスティング:DC)について※重要

現在の制度会計では、製造業の製品「製造原価」計算は「フルコスティング(FC:全部原価)で行うことになっています。自社の会計処理(売上原価計算)を確認してみましょう。

このFC:全部原価では「作れば作るほど、そして、売れ残りが多いほど」P/Lの「利益」が出てしまうことが指摘されています。

「今期支払った労務費なのに、製品の原価に労務費を按分加算して在庫原価にするため、今期支払ったP/L労務費が売れ残りのB/S在庫価格として資産計上されている」のです。

いかがでしょうか、通常の営業活動(年間のフロー)におけるP/L利益と、B/Sキャッシュの関係について、理解は進みましたか?

それでは次に、既に滞留している(ストック)主に「有形固定資産」について考えてみます。

3.B/S減価償却資産(主に「有形固定資産」)

第一章の3.でお話しした、「今回取得した資産」の「会計上の仕分け」とは別に、「有形固定資産」の価値などについて考えてみましょう。

☆減価償却後の残存価値と、その固定資産の実質価値は一致しない。

例えば、車両の場合、税法で定められた減価償却の通り残存価値を評価しても、その車を中古で転売するときに、帳簿上の価格通りに買ってくれる相手がいるでしょうか?

同じように、店舗として建築した建物の減価償却期間が20年として、途中で転売するときの帳簿上の残存「価格」は、購入する相手にとって「価値」のある価格でしょうか? さらに、せっかく3~5年くらいで「店内改装・リニューアル」しても、個性的な建物ほど、同業者以外には「価値がない」ものであり、安値でしか買ってもらえないということもあるでしょう。

このように、税法に沿った処理で減価償却をした後の「残存価格」の評価額は、途中で売却してキャッシュに換金できる「実勢価格」とは一致しないのが通常です(大抵は「売却損」が出る)。つまり、B/Sの固定資産の帳簿価格には、多くの場合で「売却損」や「除去損」のリスクを内包しているということになります。