ラジオ体操に参加していた人達が帰っていく。私に声をかけていく人もいる。考えて、自転車に乗って駅の方へ向かった。駅の近くの喫茶店でモーニングセットでもとって時間をつぶそう。駅入口の十字路の所迄行って、ふと交番へ寄ってみようと思った。交番は十字路を曲がるとすぐに見えて、何と飯村巡査が立っているではないか。私は彼の前に自転車を止めた。飯村巡査が驚いて声をあげた。

「どうしたんです。こんなに早く」

「何か寝そびれてしまって」

奥から初老の巡査が出てきたので帽子をとって挨拶する。飯村巡査が私を紹介し、こちらは横山巡査長ですと紹介してくれた。

「貴方ですか、公園のパトロールをやっていらっしゃるのは」

「はい。飯村さんにはいつもお世話になっています」

「いやいやお世話になったのは飯村の方で、昨日の鳩の死をカラスがやったのではないか、とサジェッションして下さったので、彼は面目が保てました」

「そうなんです。おかげでパトロールが雑だなんて怒られなくてすみました」

「あれは私も確信があったわけではなかったのです。あの後、公園課の小原係長が知らせて下さいまして」

「こちらへも小原さんが知らせてくれました。あの方はいい方ですな」

「本当に。私なんかも随分と庇っていただいております」

横山巡査長も温厚な人物で、非常に心のあたたまる思いをして別れた。近くにあったチェーン店の喫茶店で、モーニングをとって、のんびりと時間をすごした。適当な時間をみはからって、公園へ戻ろうと自転車を走らせていて、ふと、小笠原老人への土産を美代子シェフに相談してみたら、という考えが浮かんだ。昼休みだと他の客がいて時間がとれないだろうから、役所には申し訳ないが、午前中に店を訪れて相談してみよう。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『鳩殺し』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。