メキシコ国境警察 PART17

この間のウイルソンとのエピソードウイルソンに送金したお金が彼に届かなかった時、よくウイルソンと喧嘩した。荷物の事でも喧嘩した。

特に所有者がわたしになったあたりから、ウイルソンはわたしに疑いの言葉を浴びせた。わたしに絡んだ。なぜなら荷物は所有者の物だから。所有者は荷物を独占する権利がある。

ウイルソンは荷物の事を心配し過ぎてよく病気になる。

彼は体力が弱っているけれど、充分な治療を受けるだけのお金が無い。

ましてウイルソンは異国にいる。異国で病気になった時は医療費は高くつく。

ウイルソンは自分の本音をわたしによくぶつけてくる。

ウイルソンは困難の中に長く置かれてるせいか、彼の頭の中はそうとう混乱している。時に彼は思いきりわたしに本音をぶつける。

荷物がテルヨの所に届いたら、荷物を盗むつもりだろう!

僕の為、Aliceの為に荷物を保管してくれるつもりはないんだろう!

僕がテルヨに返済しないと思ってるんだろう!

ウイルソンとわたしは荷物の事では約束をしている。わたしは荷物が届いたらウイルソンとAliceの為に荷物を保管する。これまで振り込んだお金は荷物から出して使っていいと、彼は提案してくれた。

ウイルソンがもし荷物が届く前に死んだ時は、わたしはAliceの世話をする。

わたしは本気でAliceを引き取って自分の実の娘のように世話をしようと思った。Aliceを大学に入れる事も考えた。

4月半ばのことだった。ウイルソンは自分の病気を訴えてきた。その訴えは切実だった。

1週間前から身体全身が熱い! 心臓も早く打ってる! 夜は身体全体が寒い! ベッドから動けない!

これが僕の最期だろう。祈ってくれ! 僕が死なないように。

更に訴える。

荷物は全部テルヨの物にしてくれ。Aliceの世話を頼む!

この世でテルヨに逢えないのが残念。あの世で逢おう。

わたしは号泣した。

今すぐ彼の所に飛んで行って彼を腕の中で抱きしめてやりたい。わたしは彼に救急車をホテルの人に呼んでもらうように訴えた。

彼が言うには少しでも治療費の保証金を持って病院に行きたい。わたしは即、数百ドルを治療費として送った。そして、言った。

治療費が届く前に今すぐ病院に行った方がいい!

わたしを女房に仕立ててくれればいい。

女房から治療費が届くと伝えて治療を先にしてもらって!

翌日ウイルソンからLINEは来なかった。

―あの世に召されたと思った。号泣した。

何と、ウイルソンからLINEが来た。2日後に。

彼は今病院を出たと告げてきた。今からホテルに戻ると。ほっとした。彼からLINEが来るまでの間、ずっと泣いていた。

彼と喧嘩する事があっても、やっぱりウイルソンのことが好き!